親知らずは、通常の歯とは別に生えてくる歯で、奥歯のさらに奥に生えますが、生え方はまっすぐとは限らず横向きに生えることもあります。
邪魔になるため抜歯することが多いのですが、場合によっては他の歯が失われたときに移植することも可能です。
親知らずの移植ができるケースについて、解説します。
親知らずの移植とは?
移植と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、心臓や腎臓などの臓器移植でしょう。
また、やけどの時に行う植皮も、移植の一種です。
しかし、歯の移植については聞いたことがない人が多いかもしれません。
歯はそれぞれ生える場所が決まっています。
歯が抜けたからといって別の場所に生えた歯を移植することはできず、肝臓とは違い、一部を移植することで全体が再生されるということもありません。
そのため、歯の移植は不可能であるように思うかもしれませんが、親知らずの場合は移植が可能です。
親知らずは邪魔になって抜くケースが多く、他の歯の代わりに移植しても何の問題もありません。
このように、歯を移植することを自家歯牙移植といいます。
親知らずのように正常な機能を果たしておらず移植される歯をドナー(提供)歯、移植を受ける先にある歯のことをレシピエント(受給)歯とも呼びます。
移植を受ける理由はさまざまで、例えば虫歯が大きくなり、歯としての機能を果たしていないケースが挙げられます。
また、事故によって歯が折れたなどのケースもあるでしょう。
歯を失った時の治療方法として一般的なものは、ブリッジや入れ歯、インプラント治療など歯を補う治療です。
しかし、自分の歯で補うことが可能であれば、人工物を使用するよりも快適になるでしょう。
歯の移植自体は近年始まったものではなく、20世紀半ばからある治療方法です。
自家歯牙移植だけではなく、他の人の歯を移植する他家歯牙移植も行われていました。
現代では他家歯牙移植を行うことはなくなり、自分の歯を自分に移植するケースだけになっています。
移植の際には、歯根膜が重要な役割を持ちます。
歯根膜には再生機能があり、移植してから骨組織を作り、歯周組織を再生してくれる働きがあるため、移植先で歯を定着させることが可能です。
親知らずを移植できるケースは?
邪魔になることが多い親知らずは、移植によって有効利用できますが、どのような場合でも移植できるわけではありません。
親知らずの移植ができるのは、どのようなケースでしょうか?
親知らずの移植ができる条件として、歯の形が合うことが挙げられます。
奥歯側に生えている親知らずは奥歯の形をしているため、前歯の代わりとして移植することはできません。
また、奥歯や小臼歯にも大きさの違いがあり、あまりにサイズが違うようなら移植は難しいでしょう。
そもそも、親知らずを破壊せず、形状を保ったまま抜歯できるとは限りません。
移植した後に定着しないケースもあります。
移植が可能であり、移植後も問題が生じないケースというのは非常に少ないのです。
そのため、問題なく移植できるケースはかなり限定されています。
成功したとみなせるポイントとして、まず歯根膜が再生能力をきちんと発揮していることが挙げられます。
歯根膜がはがれていると、うまく再生せず結合されません。
結合しなかった場合は顎の骨に異物と判断されてしまいます。
この場合、移植した歯を排除すべく歯根を溶かしていき、ゆっくりと抜けてしまいます。
ただし、溶かされる速度は非常にゆっくりで、10年前後かけて抜けるケースが多いでしょう。
また、歯茎と移植した歯のずれをなくし、周囲と固定さなければなりません。
歯茎をしっかりと封鎖できていない場合や固定が甘い場合などは、歯根膜が正常に再生されない恐れがあります。
失敗するケースとして挙げられるのは、歯が抜けてから時間が経ち、顎の骨が吸収されているために固定できないケースです。
顎の骨は、加齢や歯周病によっても減少します。
歯磨きが不十分でプラークコントロールができていない場合は、口内の細菌が増えてしまいます。
その結果、炎症が起こりやすい状態となり、移植した歯が排除される可能性が高まるでしょう。
自家歯牙移植は非常に繊細な治療なので、わずかなずれでも失敗する可能性があります。
また、神経の処置を怠った場合なども失敗する可能性が高くなります。
自家歯牙移植を成功させるためには、歯科医師からの注意をきちんと守らなければなりません。
まとめ
親知らずは虫歯や歯周病などの原因になるリスクが高いため、生えてきても邪魔者扱いされがちです。
しかし、まったく役に立たないわけではなく、条件によっては歯が失われたときの予備にできる可能性があります。
本文でも書いたとおり、親知らずの自家歯牙移植は絶対にできるわけではなく、移植が成功するとは限りません。
しかし、成功すれば快適に使用できるでしょう。
東京都品川区五反田周辺で矯正治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
一人一人に合った治療方法をご提案させて頂きます。