歯科医院は痛くなった歯を治すためだけにあるのではありません。虫歯や歯周病などを予防する「予防歯科」も歯科医院の大切な役割です。
予防歯科について、詳しく説明しましょう。
痛くなる前に処置する予防歯科
予防歯科とは、虫歯や歯周病の症状が出てから治療するのではなく、症状が現れる前に虫歯や歯周病などにならないよう事前に処置を行い、歯の病気を予防することです。
歯や歯茎の健康を保つためには、主に歯科医院などで行う「プロフェッショナルケア(プロケア)」と、歯科医や歯科衛生士から指導を受けて毎日行う歯磨きなどの「セルフケア」の2つが重要です。
どちらか一方ではなく、この2つを欠かさず行うことが、虫歯や歯周病の予防につながります。歯の健康を守ることは、健康寿命を延ばすだけでなく、長期的に見れば、医療費の負担を減らすことにもつながります。
大切な歯や口の健康を守るためにも、定期的な歯科健診をおすすめします。
定期検診の3つのメリット
歯科医院で歯の定期健診を受けると、どのようなメリットがあるのでしょうか?メリットを3つ紹介します。
歯がスッキリし、見た目もきれいに
定期健診を受けると、プロの手で歯の汚れや歯石を落としてもらえます。歯の汚れが落ちると、口の中がすっきりするだけではなく、歯も表面もつややかで明るい色になります。
3~4カ月に1回程度、定期的に美容院やエステに行く感覚で、気軽に歯のメンテナンスを受けてみてはいかがでしょうか?当院では歯科医師や歯科衛生士がプロの手でメンテナンスを行います。
歯科衛生士とは、どんな人?
歯科衛生士とは、口や歯に関する高い知識・技術を持つと認められた国家資格です。歯科医院では、歯科医師の治療の補助を行ったり、患者様の歯の手入れなどを行います。
虫歯や歯周病などを予防するため、以下医院ではフッ素塗布や歯垢や歯石などの除去、清掃といった処置を行いますが、歯科衛生士は、このような歯科予防処置の専門家です。
歯の健康が健康寿命を伸ばす
健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことを指します。長生きをするのであれば、毎日活動的に過ごしたいもの。そのためには、自分の歯でおいしく食事を取り、健康で日々を過ごすことが大切です。定期的に歯科検診を受けることで歯の健康を保ちましょう。
歯科医院で定期検診を受けている人と受けていない人の歯の数を比較したデータがあります。それによると80歳になっても残っている歯の本数は、定期検診を受けている人が15.7本。それに対し、受けていない人はわずか6.8本だったそうです。その差は8.9本にもなりました。しっかりとメンテナンスを続けることで、80歳になっても自分の歯で食事をすることができるのです。
歯は健康で、お財布にもやさしい
「定期的に検診に通うと、費用がかさむのでは」と不安に思われる方もいるかもしれませんが、実はしっかり定期検診を受けていたほうが治療費を抑えることができます。
なぜなら、歯のケアを怠り痛くなるごとに治療を受ける方は、治療のために高額な費用がかかり、しかも治療のたびに歯は大きなダメージを受けます。そして、治療を繰り返すと、歯は最終的に抜歯せざるを得なくなります。
「3カ月ごとに定期検診を受ける方」と「歯が痛くなったり、腫れたりしてから治療を受ける方」が支払う治療費をシミュレーションしたところ、定期健診を受けていない方は80歳までに約435万円、定期健診を受けている方は80歳までに約151万円という結果がでました。あくまでも推定ですが、80年間で約3倍もの差がついてしまいます。
定期健診は長い目でみれば、医療費の 負担を軽くしてくれ、そのうえ歯を健康に保つことができるのです。
歯を守るために欠かせない定期検診
歯の定期検診とは、ある一定の間隔で来院していただき、日ごろの歯磨きなどのケアでは除けない汚れなどを落とし、歯や歯茎の状態をチェックすることです。
歯の清掃では、歯磨きでは落としにくい場所の歯垢や歯石を、歯科専用の器具を使って落としていきます。一般的には、3カ月から4カ月ごとの来院をお勧めしています。
定期検診を続けていただくことが、生涯、大切な歯や歯茎を守っていくことにつながるのです。
定期検診では何をするの?
定期健診では具体的にどんな処置を行うのでしょうか。定期検診の具体的な流れを紹介しましょう。
口全体のチェック
歯や歯茎、粘膜など口の中の状態を確認します。もし気になる個所があれば、お伝えください。
ムシ歯のチェック
以前に治療した歯だけではなく、新たに悪くなっている歯はないかチェックします。虫歯は早期発見早期治療が大切。歯の隅々まで、念入りに調べます。
歯茎肉のポケットの深さの測定
歯と歯茎の間に歯垢や歯石がたまった個所を「歯周ポケット」と呼びます。歯周病が進行すると、歯周ポケットはどんどん歯の根元に向かって深くなっていきます。
歯茎の炎症や出血がないかを確認し、歯周ポケットの深さを測ることで、歯周病が進行していないかを調べます。
経過観察個所のチェック
それまで経過を観察していた個所があれば、患者さまから状態を伺いながら、チェックを行います。
歯のクリーニング
歯磨きなど自宅のケアでは取りきれなかった歯垢や歯石を取り除きます。歯垢や歯石が多い場合や歯周病が進行している場合は、2、3回院していただくこともあります。
次回に向けての説明とアドバイス
現在の歯の状況についてご説明させていただき、改善が必要な点があれば、毎日の歯や歯茎のケアの仕方についてアドバイスします。気になる点や心配な点などがあれば、お気軽にお尋ねください。
歯科健診にかかる費用はどれくらい?
日本には健康保険制度があり、外国に比べて歯科治療は安く受けられます。歯科健診も保険の対象となります。
1回の検診でかかる費用は、歯の状態や必要な検査などにもよりますが、だいたい3,000円〜4,000円くらいです。
1回のメンテナンスには、30〜60分程の時間がかかりますが、歯石や歯垢を取り除く歯のクリーニングは、とても気持ちのよい処置です。痛みもほとんど感じません。
こうした処置を年に3回、定期的に受けても、費用は年間9,000円~12,000円です。しかし、もし虫歯になって、詰め物をしたり、抜歯したりしなくてはならなくなった場合、もっと多額の費用がかかってしまいます。
歯科検診を定期的に続けるほうが、お得だと思いませんか。
歯のクリーニングPMTCとは
歯科専用の機器を使い、歯磨きでは落とせない歯の汚れなどを落とすことををPMTCと言います。PMTCとは「プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング」の頭文字を取ったものです。
PMTCでは、歯科医師や歯科衛生士などの有資格者が専用のブラシや研磨剤、超音波を使った機器などで歯の表面を清掃します。特に歯と歯の間など自分では磨きにくいところや、歯磨きの癖でよく磨けていないところを中心にクリーニングし、歯の表面を軽く研磨します。これによって、歯は本来の白さに近づきます。
また、仕上げにフッ素を塗るので、虫歯になりにくい歯の状態を保つことができます。
バイオフィルムを機械的に除去する効果
歯の表面に汚れが溜まってくると、歯の表面がネバネバしてきます。これは、バイオフィルムといい、歯の表面に付く細菌の塊です。
浴室や台所でもヌルヌル、ネバネバした汚れが付くことがありますが、それと同じものだと考えていいでしょう。
細菌で形成された膜のようなものです。
バイオフィルムが歯の表面に付着すると、虫歯や歯周病のリスクが増大します。バイオフィルムは歯ブラシでは除去できず、虫歯予防などのフッ素や薬液の効果を妨げます。こうしたバイオフィルムを専用機器を使っって除去するのがPMTCです。