歯周病は、歯や歯茎に付着したプラークが原因で発症する病気です。
また、リスクファクターと呼ばれる危険な要素により、さらに進行する可能性があり、重度になると取り返しがつかなくなります。
今回は、歯周病の主なリスクファクターについて解説します。
目次
歯周病の主なリスクファクター
歯周病を進行させる主なリスクファクターは次のとおりです。
・糖尿病
・喫煙 ・歯ぎしり、食いしばり ・不適合な補綴物 ・不規則な食習慣 ・ストレス ・全身疾患 ・薬の長期服用 ・部分的な歯の欠損 ・口呼吸 ・遺伝的要因 |
各リスクファクターの詳細について説明します。
糖尿病
糖尿病が歯周病のリスクファクターになる原因として次が挙げられます。
・唾液の分泌量の低下
・唾液の糖分濃度の上昇 ・感染を防ぐ機能の低下 |
健康な方と比べて、糖尿病の方は唾液の分泌量が低下します。
その結果、プラークや細菌が増殖しやすくなり、歯周病にかかりやすくなります。
また、唾液中の糖分の濃度が上昇していることも原因です。
唾液中の糖分濃度が上昇すると、プラークの付着や細菌の増殖が加速するため、歯周病が進行しやすくなります。
さらに、感染を防ぐあらゆる機能の低下も、糖尿病が歯周病を引き起こすリスクファクターとなる原因です。
機能低下により感染でダメージを受けた組織の修復が遅れて、高血糖による血管損傷で、いっそう歯周病になりやすい環境をつくってしまいます。
なお、歯周病になると、歯茎の中でつくり出される「サイトカイン」という炎症物質が血液を介してインスリンの働きを阻害し、効きが悪くなります。
つまり、歯周病が糖尿病を悪化させることもあるということです。
喫煙
タバコの煙には、数千もの化学物質が含まれていて、そのうちニコチンや発がん性物質などの有害物質は、200~300もあるといわれています。
ある統計データによると、歯周病にかかる可能性は1日10本以上喫煙すると5.4倍に、10年以上吸っているとさらに4.3倍にまで上昇し、重症化しやすいこともわかっています。
また、喫煙をしていると、歯茎の腫れや出血が見た目上抑えられ、患者さん自身が歯周病に気付きにくくなります。
歯ぎしり、食いしばり
歯ぎしりや食いしばりを行うことが、歯周病の直接的な原因になるわけではありません。
しかし、歯茎や歯周組織に大きな負担がかかるため、歯周病の症状を悪化させたり、促進させたりすることにつながります。
ダメージが積み重なることにより、歯茎自体が衰えるだけでなく、歯周病の進行を加速させてしまうのです。
不適合な補綴物
不適合な被せ物や詰め物によってブラッシングしづらくなると、歯周組織に悪影響を及ぼします。
例えば、被せ物と歯の間にオーバーラップがある場合、歯の上に被せ物の縁が張り出し、ひさしのような状態になり、ブラッシングがしにくくなります。
なぜなら、歯ブラシの毛先が張り出した部分に邪魔をされ、歯周ポケットの深部まで歯ブラシの毛先が届かなくなるためです。
プラークが溜まりやすくなり、歯周病を進行させてしまいます。
不規則な食習慣
不規則な食事は血行不良などを引き起こし、歯周病を引き起こす菌に対する抵抗力が弱まるため、歯周病のリスクファクターとなります。
歯周病はプラークによって歯茎に炎症が起こる病気です。
プラークとは、食後に歯の隙間に残った食物が唾液と混ざり、時間が経って細菌の塊となったもののことを指します。
これらのプラークは、食後に適切なブラッシングを行うことで大部分を除去することが可能です。
しかし、食生活が不規則であり、間食が多い場合には、こまめに歯を磨くことをしません。
歯磨きが後回しになり、歯周病の原因であるプラークが溜まりやすくなります。
なお、食生活が不規則になると、それ以外の生活リズムも乱れがちです。
夜更かしや睡眠不足などによって身体の健康が損なわれ、歯や歯茎にも影響が及ぶ可能性があります。
ストレス
ストレスが歯周病のリスクファクターとなるのは、唾液の分泌量が少なくなるためです。
唾液の中には、ラクトフェリンやリゾチーム、免疫グロブリンといった、歯周病菌に対する免疫物質が含まれています。
人がストレスにさらされると、主に交感神経が優位になり、唾液の分泌量が減少します。
唾液の分泌量が少なくなると、ラクトフェリンなどの免疫物質も少なくなってしまうため、歯周病につながりやすくなるのです。
また、ストレスを感じると、脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモンが分泌され、さらに副腎からコルチゾールに代表される副腎皮質ホルモンが分泌されます。
コルチゾールには、免疫活動を担うリンパ球の働きを低下させる作用があるため、歯周病に大きな影響を与えます。
全身疾患
糖尿病以外の全身疾患の中で、骨粗しょう症は歯周病におけるリスクファクターの一つです。
骨粗しょう症を患う方の90%以上は、重度の歯周病にかかるといわれています。
骨粗しょう症を発症する原因は、加齢や運動不足、生活習慣などさまざまです。
その一つにエストロゲンというホルモンの減少があります。
エストロゲンが減少すると、歯と歯茎の境目などで炎症を引き起こしやすくなり、歯周病が悪化するのです。
また、骨粗しょう症により、歯を支える骨も弱くなることから、より歯が抜けやすい状態になります。
他に、歯周病の進行を早めるリスクファクターとしてホルモン異常も挙げられます。
ホルモン以上は女性に見られる症状です。
思春期になると、プロゲステロンなどの女性ホルモンの増加により、歯茎の血流量が増え、代謝が活発になります。
その結果、プラークなどの刺激物に反応しやすく、歯周病にかかりやすい状態になってしまうのです。
薬の長期服用
抗てんかん薬(フェニトイン)、免疫抑制剤(シクロスポリンA)、降圧剤(ニフェジピン)などの薬剤は、長期扶養で歯茎の増殖を引き起こすことがあります。
また、多くの薬剤は唾液の分泌量を減少させるため、唾液の持つプラークの浄化作用が低下するおそれがあります。
部分的な歯の欠損
部分的な歯の欠損が歯周病のリスクファクターとなるのは、口腔内が不衛生になることが理由です。
歯が部分的に欠損した状態を放置すると、噛み合う歯が伸びてきたり、隣り合う歯が傾いたりします。
その結果、噛み合わせの乱れや歯と歯の隙間が広くなることなどにつながり、口腔内の不衛生を招き、虫歯や歯周病、歯を失うリスクを高める原因になります。
また、歯が部分的にない場合、歯がある方ばかりで噛みがちです。
一方の負担が増加し、その近辺で部分的に歯周病を発症したり、進行したりすることも考えられます。
口呼吸
口呼吸が歯周病のリスクファクターになるのは、口腔内の乾燥を招くためです。
唾液の自浄作用によって口腔内に残る食べかすや細菌を洗い流すことで、歯茎を歯周病から守ることが可能です。
しかし、口呼吸によって口内が乾燥していると、歯茎の部分に唾液の自浄作用が見られません。
リンパ球や白血球が炎症部位に到達しにくくなり、歯周病を進行させる可能性があります。
遺伝的要因
歯周病のリスクファクターのうち特殊なものが、遺伝的要因です。
歯周病の中に若年性歯周炎というものがあります。
歯周炎という病名ですが、症状は歯周病と変わりません。
歯周病は、免疫力が低下するほど感染しやすくなる点が特徴の一つです。
そのため、大抵は40歳前後から症状が現れます。
しかし、若年性歯周炎は永久歯がやっと生え揃ったくらいの健康な若者に現れ、急激に悪化します。
若年性歯周炎は、遺伝的要因が関与しているようです。
具体的には、歯の組織の抵抗力や免疫力が遺伝して、歯周病にかかりやすくなるという仕組みです。
若年性歯周炎は通常の歯周病とは異なり、治療が難しいといわれています。
前述したとおり進行のスピードが速いため、早期から治療にとりかかることが肝要です。
まとめ
歯周病の直接的な原因は歯に付着したプラークですが、総合的に自身の生活や健康について見直さなければ、防ぐのが難しい疾患であるといえるでしょう。
また、生活や健康状態に問題があると、歯周病だけでなく虫歯や口臭など別の症状にもつながるため、注意しなければいけません。
東京都品川区五反田周辺で歯周病治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
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