80歳で20本の歯が残っていることを目指す8020運動は、達成者が5割を超えたことで歯の本数だけではなく、口の機能の維持にも注目されています。
口の機能を維持するために行われるのがオーラルフレイル対策ですが、具体的にどのようなものでしょうか?
オーラルフレイルとは何か解説します。
オーラルフレイルとは?
昔と比べて平均寿命は長くなっていますが、特に日本は世界各国の中でも長寿国として知られています。
しかし、ただ長く生きていくことを目指しているわけではありません。
日本で現在重要視されているのが健康寿命を延ばすことです。
それにあたり、とりわけフレイル予防が重要になります。
年齢を重ねたときに、何も対策していなければ体の力がだんだん弱くなります。
若いころに比べて外出も少なくなり、介護や手助けが必要となることが増えてしまうでしょう。
病気ではないとしても、加齢によって心や体の働きが弱ってしまった状態のことを、フレイルといいます。
フレイルは高齢になってからの生活の質を落とす原因になります。
それだけでなく、疾病の合併症を引き起こすリスクもあるため、注意しなければなりません。
ただし、早期に気づいて対策できれば、健常な状態に戻ることができるステップでもあります。
オーラルフレイルは、口内の機能の衰えを放置していたり、適切に対処しなかったりすることで起こるものです。
機能が低下して食べる機能に障害が発生し、心身の機能も低下するという負の連鎖が起こる可能性があることを指摘した概念となります。
老化は、自然の摂理に従って起こる現象であり進行性です。
したがって、食べこぼしやむせのようなオーラルフレイルの症状も、老化によるものといえるでしょう。
老化による自然な衰えとの違いとして、オーラルフレイルには社会的問題や精神的な問題なども複合しているため、不自然な衰えであるという点が挙げられます。
しかし、早期に気づき、対策をしていけば、機能低下を緩やかにすることが可能で、失われた口腔機能も回復できるかもしれないということが分かっているのです。
反対に放置すると、老化よりも早期に口腔機能が低下してしまうという点が、単なる老化との大きな違いとなっています。
オーラルフレイルの進行について
オーラルフレイルは4つのステップに分けて考えられています。
ステップによって対応にも違いがあるのです。
最初のステップは口の健康に対する興味の低下です。
加齢によって個人の社会的環境に変化があると、口が持つ役割にも変化が訪れます。
自分の役割が変化して、新たな役割を持てなくなることなどがきっかけで、自身の健康への興味がなくなっていくステップです。
健康の知識や情報を活用する健康リテラシーの能力が低下してしまい、さらに口に関する健康リテラシーも下がってしまいます。
次のステップが口の些細なトラブルです。
このステップは、日常生活において口の機能が低下することで、食に関する環境が悪化する前触れとなります。
固いものが食べづらくなったことで、「消化にもいい柔らかいものを中心に食べよう」という誤った食事の選択が習慣化してしまい、口の機能がだんだんと低下するのです。
3つ目のステップは口の機能低下です。
機能低下が明確になり、筋肉量の低下や低栄養になってしまう恐れがあります。
さらに4つ目のステップになると食べる機能に障害が発生します。
このステップは、要介護状態となって運動や栄養に障害が出てしまう段階です。
摂食嚥下機能障害と診断されることもあります。
オーラルフレイルとの付き合い方
オーラルフレイルについて考える際は、普段の食事を中心として考えることが一般的です。
日本における食を取り巻く環境は戦後間もないころと比較すると、くらべものにならないほど豊かです。
各人が好みによって食事の内容を選び、楽しむことができるようになりました。
食べやすく柔らかいものが多い食事は悪いわけではありません。
しかし、オーラルフレイルが進んで食べる機能が衰えても気づきにくいことが問題です。
衰えを自覚しないままオーラルフレイルが進行し、ようやく自覚できるようになったときには機能がひどく低下しています。
機能が著しく低下すると、対応や回復が困難になるリスクが高まってしまうのです。
オーラルフレイルに適切な対応をせず放置していると、フレイルが加速して健康寿命にも悪影響を及ぼす可能性があります。
実は、日常生活の中で口腔機能の衰えなどの兆候に気付くのは、困難だと言われています。
オーラルフレイル対策をするのであれば、何らかの方法でリスクの有無をチェックすることが重要です。
なお、チェックにはいくつかの方法があります。
特に広く使用されているのが、8項目の質問内容です。
「固いものを食べられるか」「義歯を使用しているか」「口内が乾燥していないか」などのチェック項目があります。
8問中で3問以上が該当する人のうち、3割から5割ほどは65歳であることから、高齢者の多くはオーラルフレイルのリスクを抱えていることがわかります。
オーラルフレイルへの対策方法の1つが口腔体操です。
効果には期待できますが、継続できるかどうかを考慮した場合には、習慣として日常生活に溶け込みやすいもののほうがよいでしょう。
このことを考慮すると、うがいが日常生活の中で有効なオーラルフレイル対策となります。
風邪やインフルエンザなどの感染予防のために、普段から帰宅時に手洗いと同時にうがいを行っている人は多いでしょう。
ブクブク・ガラガラとうがいをすることは感染予防にもなりますが、口腔機能や嚥下機能の維持・向上にも役立つのです。
うがいをするときは、普段よりも長めに続け、回数を増やして動きを意識して行うと、さらに効果が高まります。
オーラルフレイル対策では、対策を行う際の具体的な目標をそれぞれが持ち、自覚することが特に大切です。
対策を実施することでオーラルフレイルのリスクを減らせます。
また、「口を何に使うのか」というのも、オーラルフレイル対策のポイントです。
口を使うのは食事のときだけではありません。
会話の際、周囲の人とコミュニケーションをとるためにも重要です。
また、友人などとカラオケに行って歌うときにも口をよく動かします。
まずは口の機能に対して関心を持つことがオーラルフレイル対策において重要になるため、楽しめる目的をもっておくことをおすすめします。
楽しい目標に向けて、長く楽しむことができるように、オーラルフレイルに関心を持ち、重要性を理解していきましょう。
オーラルフレイルについて不安なことがある場合や気になった場合には、歯科医院で相談してみてください。
日本歯科医師会や8020推進財団のホームページでも動画で紹介されているため、一度のぞいてみることをおすすめします。
口の機能は衰えてもある程度回復できるため、すでに使いづらくなったという人もあきらめないことが重要です。
長く口の機能を保つことができるように、オーラルフレイルについて理解を深め、悪化を防ぎましょう。
まとめ
加齢によって、体力のみならず心身も弱くなってしまうことをフレイルといいます。
特に口の機能などが弱くなることをオーラルフレイルといいうのです。
オーラルフレイルは、口内の機能が弱まって柔らかいものばかり食べるようになり、栄養を十分に取れなくなってしまうなどの状態を指します。
だんだんと進行していくため、具体的な内容や付き合い方などを学んだうえで、悪化を防ぎ、機能を回復できるようにしましょう。
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