歯並びを整えるための矯正治療では、場合によって健康な歯を抜歯することがあります。
しかし、近年では抜歯をしないという矯正治療も増えています。
抜歯を避けたいという人は多いのですが、抜歯をしないで歯並びを整えるという矯正治療は本当にいい矯正なのでしょうか?
抜歯をしない矯正治療について、解説します。
なぜ、抜歯が必要なのか
歯列矯正は、歯並びを整える矯正治療です。
歯がきちんと並んで生えておらず、前後や斜めにずれている時に、矯正装置を使用して正しい位置へと歯を移動させます。
矯正治療を行う際は、抜歯が必要なこともあります。
通常、抜歯が必要なのは、歯の根元まで虫歯に感染していたり、歯が正しく機能しなくなっていたりする場合です。
矯正治療で抜歯が必要な理由として、歯が正しい位置に並ぶためのスペースが足りないことが挙げられます。
歯は歯槽骨という骨に沿って生えますが、顎の骨が小さかったり歯が大きかったりする場合には、歯槽骨よりも歯の方が幅広くなってしまいます。
例えるならば、4人掛けの長いすに5人座らなくてはならないということです。
座るスペースが足りないため、1人あぶれてしまうでしょう。
矯正治療の際に抜歯をしなくてはならないのも、同様の理由です。
あぶれてしまう歯が発生しないように、抜歯するのです。
抜歯をしないという矯正治療は、どのように行うのでしょうか?
抜歯をしないでスペースの不足を解消する方法には、大きく分けて3つあります。
具体的な方法について、解説します。
抜歯をしない治療方法の1つ目に、歯を抜かないで奥歯をさらに奥へと移動させるという方法が挙げられます。
奥歯を動かすことによって、歯が並ぶスペースが確保できるのです。
奥歯を動かして矯正治療を行うのは、以前は困難でした。
しかし、歯科矯正用アンカースクリューというネジができたことによって、可能となりました。
奥歯を移動させる際、親知らずがあるとトラブルの原因になります。
したがって、他の歯は抜歯しなくても、親知らずは基本的に抜歯します。
2つ目の方法は、歯並びを外側に広げるというものです。
歯はU字型に並んでいますが、アーチを広げることでスペースを作ります。
広げるのはごく僅かなので、顔の輪郭が大きく変わることもありません。
この方法の場合はわずかに広げるだけなので、歯が並ぶためにできるスペースも少しだけです。
歯並びによっては、スペースが足りないこともあるでしょう。
少しだけ足りない、という場合のみ行うことができます。
3つ目に、歯の表面のエナメル質を少しだけ削ってスペースを確保する方法が挙げられます。
1本あたり0.25mm削るだけでも、2本の歯の間には0.5mmのスペースができます。
歯を並べるために足りないスペースは少しだけなので、0.5mmでも十分というケースが多いでしょう。
エナメル質を削ると虫歯になりやすいため、歯を削った後はフッ素コートを施して虫歯を防ぎます。
抜歯をせずに矯正する場合に、よく用いられる方法です。
抜歯をしないメリットとデメリット
歯を抜かずに矯正治療を行うメリットとして、健康な歯を残すことができる、ということが挙げられます。
永久歯は一度生えるともう生えてくることはないので、なるべく抜かないようにしたいと思う人は多いでしょう。
虫歯や歯周病でも、歯を抜かずに治療するケースが増えています。
また、削った歯は元の状態には戻らないので、歯を削るのも避けた方がいいでしょう。
しかし、虫歯の治療で歯を削らないのと、矯正治療で抜歯をしないのとでは、大きな違いがあります。
矯正治療で歯を抜かないと、いくつかのデメリットがあります。
まずは、歯肉が退縮してしまうリスクが生じることが挙げられます。
歯肉退縮は、歯肉が下がってしまう症状であり、どの矯正治療でも起こり得るため注意が必要です。
狭いスペースに歯を並べようと無理をすると、歯茎にかかる負担も大きくなってしまうため、歯茎が下がって歯が普段よりも広い範囲で見えてしまいます。
歯茎が下がると、根面う蝕などの可能性も高くなります。
口元や横顔を改善することが難しいというのも、デメリットの1つです。
口元が整っているかどうかを示す基準の1つに「Eライン」というものがあります。
抜歯を避けた場合は、Eラインを改善するのが難しいのです。
検査と分析によって、抜歯の必要なしと判断されている場合は、抜歯をしないからといって治療前より悪化することはありません。
ただし、口元の出っ張りもあまり変わらないことがあります。
歯を抜かずに矯正治療を行うと、以上のようなデメリットがあります。
歯を抜かずに治療できるのか、できる場合のメリット・デメリットは何なのか、よく確認しなければなりません。
治療を始める前に、しっかりと歯科医と話し合いましょう。
まとめ
歯並びを整える歯列矯正では、歯を並べるスペースが不足している時に健康な歯を抜歯することがあります。
最近は抜歯をしない矯正治療が増えていますが、抜歯の必要があるのに無理やり抜歯せず矯正治療をした場合は、歯肉退縮などのデメリットが生じることもあります。
抜歯が必要かどうかは、検査をしたうえで決定します。
必要な場合は、抜歯をしたほうが歯並びもきれいに整うのです。
東京品川区五反田周辺で矯正治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
一人一人に合った治療方法をご提案させて頂きます。