矯正治療を受けたときに、歯を抜かなくてはならないケースがあります。
しかし、抜歯を嫌がる人は少なくないでしょう。
近年では抜歯をしない矯正治療が増えていますが、抜歯をしないで矯正するのは問題ないのでしょうか？
抜歯しない矯正は果たしてよいのか、問題はないのか、解説します。
矯正治療で抜歯は必要？
永久歯に生え変わった後の歯は、たとえ虫歯や事故などで失われても、再び生えてくることはありません。
そのため、できるだけ長く自分の歯を使えるようにすることが大切で、虫歯の治療などでも、歯をなるべく抜かないようにする治療をすすめられるケースが増えています。
そのため、矯正治療で歯を抜くケースがあると聞くと、「歯を抜いてもいいの？」と疑問に思うかもしれません。
「歯並びを整えるために歯を抜くことは、果たして問題ないの？」「必要なら抜歯するべきなの？」と悩んでしまう人もいるでしょう。
実は、歯を抜くべきか、それとも抜かない方がよいのかは、矯正治療の専門医の間でも意見が分かれています。
矯正治療に関しては、100年以上前から抜歯については派閥が分かれていて、論争が続いているものの、結論は出ていません。
日本人の場合、顎の幅を広げることができる小児矯正を受けていないケースが多いです。
また、人種的にも顎の骨が狭くなっています。
そのため、白人と比べた場合、日本人は矯正治療において歯を抜かなければならないケースが多い傾向があるのです。
しかし、矯正器具が新たに開発され、技術も進歩したことで、以前とは歯の動かし方が変化しています。
従来なら抜歯がどうしても必要だったケースでも、抜かずに治療できることがあるなど、希望に合わせて治療できる可能性が高くなっています。
特に、近年では抜歯をしない矯正治療を希望する人が増えているため、歯を抜かなくても矯正できることを売りにする歯科医院も増えているのです。
しかし、歯を抜かずに矯正治療をすることに重点を置きすぎると、別のトラブルが発生することがあります。
抜歯した方がスムーズに治療できるケースも少なくないため、必ずしも歯を抜かずに矯正治療をすることがいいとは言い切れません。
矯正治療を検討し、複数の歯列矯正専門のクリニックで相談したところ、「抜歯をした方がよい」というところと「抜歯の必要はない」というところがあった、という人もいます。
専門のクリニックで正反対のことを言われてしまうと、どちらを信じればいいのか混乱してしまうでしょう。
実際には、矯正専門の歯科医であっても判断はそれぞれ異なるため、どちらが正しいとも言い切れません。
抜歯する必要があるという意見と、抜歯しなくてもいいという意見のどちらを信じるべきか悩んだ場合には、自分が希望する方法を提案したほうを選ぶことをおすすめします。
抜歯が必要かどうかはどう判断する？
矯正歯科では、歯列矯正の治療計画を立てる際にさまざまな要因を踏まえて、歯をどう動かしていくのか決定します。
主な要因として、上顎と下顎のズレの度合いや歯のガタガタや重なりの度合い、奥歯の噛み合わせ、横顔の口元の見え方、年齢などが挙げられます。
抜歯が必要かどうかの判断には、歯を動かすために必要となる隙間がどのくらいかという点が大きく影響するでしょう。
それでは、歯を動かすための隙間をどのようにして作っていくのでしょうか？
詳しい内容を解説します。
隙間の作り方は、歯を傾けて隙間を拡大する方法や、奥歯を後ろに動かしてスペースを作る方法、歯の形を小さくするという方法があります。
どの方法もできない、スペースを確保できないという場合には、歯を抜かなくてはならないかもしれません。
なお、「歯を傾けることで隙間を広げる」というのが何を意味しているのかわからない人もいるでしょう。
これは、歯列を広げることでスペースを確保する方法のことです。
子どものときなら、顎がまだ成長途中にあるため拡大することもできますが、成人してからではできないため、歯を傾けてスペースを作り出します。
ただし、気をつけないといけない点もあります。
それは、歯は本来であれば顎の骨の中に埋まっていないといけないという点です。
隙間を拡大するために歯を傾けるとき、あまりに大きく傾けすぎてしまうと、歯が骨の外にとび出してしまうかもしれません。
歯が骨から出てしまうと、周囲の歯肉が下がってしまい、歯根部分がむき出しになる可能性があります。
歯肉が下がると、知覚過敏や歯周炎の原因にもなるため、あらかじめきちんと計画を立てて行わなければなりません。
奥歯を動かしてスペースを作る方法は、他の方法よりも難しい点があるため、注意して行う必要があるのです。
奥歯を動かす場合は、アンカースクリューという方法を用いたり、マウスピース矯正によって動かしたりすることになります。
以前は奥歯を動かして後ろに移動させることは困難でした。
しかし、技術の進歩によって可能となり、抜歯をしない矯正のブームの火付け役となったのです。
しかし、中には奥歯を動かすのに不向きな歯並びや、奥歯の移動先に骨が少ないため移動させるのが難しいケースもあります。
顎の大きさに対して歯が大きい場合には、それぞれの歯の端のエナメル質を削り、小さくすることで隙間をつくるという方法もあるでしょう。
ただし、削る量が多すぎると神経に近くなって痛みを生じたり、染みたりすることがあるため、一般的にはわずか0.25 ～0.5mm程に抑えられます。
上記のような歯を抜かない方法が、生体の許容範囲内で行われるのであれば、問題はないでしょう。
しかし、許容範囲を超えて無理に行われる場合には、治療後の安定が悪く後戻りしやすくなることがあります。
また、歯周組織に対して害をもたらすという、抜歯が必要な場合よりももっと避けたい結果になることもあるでしょう。
歯を抜かずに矯正治療をしたいと思っていても、抜かないと矯正治療ができないというケースも少なくありません。
矯正治療で歯を抜く必要がある時は、第一小臼歯という前歯と奥歯の間にある歯が選ばれることが多いでしょう。
第一小臼歯はおよそ7mm前後の幅があるため、左右とも抜いた場合は14mmという大きなスペースを確保することができます。
必要な隙間は歯並びの状態によって異なりますが、大きくズレている人や唇が前に出てしまっている人、顎が上下で大きくズレている人は、より多くのスペースが必要です。
もしも、抜歯をしない方法で十分なスペースを得ることができないと判断されたら、抜歯が必要になってしまいます。
歯科治療においては歯を失わないようにすることも大切ですが、噛み合わせをきちんと整えることも重要です。
噛み合わせが悪いまま放置していると、全体の歯に負担がかかります。
矯正治療で抜歯する1本では済まないような被害が出るかもしれません。
1本の歯を犠牲にして他の歯にかかる負担を取り除くことも可能なので、歯科医とよく相談したうえで、治療内容を決めてください。
まとめ
矯正治療を行うとき、歯が並ぶスペースが不足している場合には、抜歯してスペースを確保します。
しかし、最近では抜かない矯正も増えています。
歯を抜かず、奥歯を後ろに下げたり他の歯を動かしたり、あるいは歯を削ったりしてスペースを確保することもありますが、どうしてもできないケースもあるでしょう。
単に抜かないのがいい矯正治療というわけではありません。
必要な抜歯をきちんと行い、結果に結びつけることがいい矯正治療といえるでしょう。
東京品川区五反田周辺で矯正治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
一人一人に合った治療方法をご提案させて頂きます。