舌は広範囲で動かすことができるため、どこにあっても問題ないと思われるかもしれませんが、実は正しい位置が決まっています。
無意識の状態のときに舌が正しい位置にないようだと、トラブルが発生する恐れがあるのです。
正しい舌の位置はどこなのか解説します。
正しい舌の位置とは?
舌はさまざまな位置に動きます。
普段どこにあるのか意識していない人は多く、「舌がいつもある場所を教えてください」と言われても、どこにあるのかわからない人は多いでしょう。
また、舌の正しい位置について知らないという人も多いと考えられます。
舌の正しい位置とは、先端が上の顎にくっついた状態のことです。
横から見た場合、前歯の裏に舌先がくっつき、中心に近い部分が上顎に接した状態になります。
誤った位置にある場合は、舌が上の顎から離れてしまいます。
たとえば、上下の歯の間にある状態などです。
中でも歯並びが悪い人は、舌の位置がよくないことが珍しくありません。
上顎が十分に成長しなくなったり、歯にかかる力が強くなりすぎてしまったりすることもあるのです。
舌が誤った位置にないかどうかはセルフチェックが可能です。
主な方法として何があるのか解説します。
まず挙げられるのは、鏡を見ながら舌の位置がどうなっているのかを見る方法です。
手持ちの鏡を持ち上げて口を見つつ、歯は噛んだ状態にするといいでしょう。
歯を閉じたままでつばを飲み込んでみたとき、歯の間から舌が見えてしまったり、舌が歯に当たっているような感触があったりする場合は注意してください。
舌が正常な位置よりも前に出すぎている「舌突出癖」という舌癖の可能性があるからです。
チューインガムを使用するのも、セルフチェックとして有効な方法です。
チューインガムを柔らかくなるまで噛み続け、丸めてみましょう。
丸めた状態のまま舌先付近までもっていき、上顎に押し当てたときにできた形状がどうなっているか確認してください。
ガムが丸くなっていれば問題ありません。
しかし、丸くなっていなかったり前歯に付着したり縦長になっていたりした場合には、舌が正しい位置にない可能性があり、注意が必要です。
舌が誤った位置にあると、「低位舌」と呼ばれる状態になります。
低位舌の特徴として、舌の側面に歯型がついていたり、気づいたら口が開いていたりするという点があります。
また、声が小さい、滑舌が悪く発音がしにくい、くちゃくちゃと音を立てながら食べる癖がある、いびきをかいて寝るといった特徴がある場合には、低位舌の可能性があるでしょう。
舌の位置が悪い場合の影響
人間は何かを飲み込むような動きを1日あたり数千回行いますが、舌によって歯には歯列矯正よりも強い力がかかっています。
舌が誤った位置にあると歯を前に押し出してしまいます。
そのため、出っ歯や開咬、受け口など不正咬合の原因になってしまうこともあるでしょう。
また、歯並びは顎の骨や頬、舌の筋肉に囲まれた状態で形成され、バランスよく機能する口も正しく働きます。
舌が低位舌になっていると、上顎が狭くなってしまうため、歯並びも悪くなってしまうでしょう。
それだけでなく、一部の発音がしにくくなって舌の筋力が低下し、顎の位置が動いてしまうかもしれません。
軌道が狭まり、口呼吸になってしまうこともあるでしょう。
さらには、睡眠時無呼吸症候群になってしまう可能性もあるのです。
このように、低位舌の場合はさまざまな悪影響が生じますが、結果として口が常にぽかんと開いた状態になる可能性も高まります。
位置を治すには?
大人になってから舌を正しい位置に治そうとした場合、かなりの時間がかかるでしょう。
それまでの癖が身についてしまっているため、正しい舌の位置や食べ物の正しい飲み込み方など、口の機能に関しては子どものうちから覚え、習慣化する必要があります。
舌癖をただすための方法として挙げられるのが口腔筋機能療法、つまりMFTです。
口の周囲の筋肉をバランスよく整えるトレーニングを行うことで、舌の位置を改善します。
舌癖が原因で歯並びが悪くなっているのであれば、MFTによって改善することで、歯列矯正の際にスムーズに治療を進めることができるでしょう。
それだけでなく、矯正治療とMFTを併用することで、治療後に歯並びが元に戻る「後戻り」が起こりにくくなります。
また、口腔機能発達不全症の改善にも効果的です。
MFTにはさまざまな方法があります。
ここでは、ベーシックエクササイズといわれる基本的な方法はどのようなものかを紹介します。
ベーシックエクササイズは、特定の動きを1日に2セット行うというのを続けていくのが特徴です。
まずは道具を何も使わない状態で舌の形を変え、とがらせてみたり平たくしてみてください。
顔の前で箸を持ち、舌の先端部分を強くまっすぐ押し出してみたり、舌を出して真ん中に箸をおき、舌の力で持ち上げたりするトレーニングも重要です。
口を開けて舌の先端部分でゆっくりと上唇をなぞったり、上を向いて口を大きく開けガラガラうがいをして止めたりするトレーニングもあります。
MFTのトレーニングは、咀嚼や嚥下などの基本的な動きに必要な口の周りの筋肉をつけることからスタートしていくのです。
画一的なトレーニングだけでなく、それぞれの口の状態に合わせて頬や唇、舌など口周りの筋肉などのバランスを整えていくことも必要となります。
以上のとおり、舌の位置と舌癖は非常に強い関わりがありますが、中には「そもそも舌癖にはどのようなものがあるの?」と疑問を抱く人もいるでしょう。
舌癖には、食べ物を嚥下する動きをするときに舌を噛んでしまったり、上下のいずれかの歯を押したりする癖などがあります。
いずれの癖も、歯並びに悪影響を与える恐れがあるため、放置するのは好ましくありません。
舌癖が歯並びに悪影響を与える例として挙げられるのが、「開咬」という不正咬合の1つです。
上下の前歯がかみ合わずに隙間ができる状態のことを指し、治療が特に難しいといわれています。
治療を終えた後もなかなか安定しないかみ合わせなのです。
ちなみに、低位舌や飲み込む際に上下の歯を舌で押す癖がある場合に、開咬になる恐れがあるといわれています。
開咬は、インビザラインという、マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置でも治療が可能です。
歯並びを全体的にマウスピースで覆います。
奥歯も覆うため、かむ力による圧下力が働き、奥歯を沈み込ませます。
奥歯にしっかりと力がかかるようになることで、舌癖などの機能異常による歯並びへの悪影響が少なくなるでしょう。
舌癖は、正しい舌の位置を身に付けることによって改善されます。
それにより、口の機能が改善され口周りがすっきりします。
歯列矯正と共にMFTを行えば、後戻りのリスクを低下させるのみならず、矯正治療の効果を促進するといった相乗効果にも期待できるでしょう。
口周りのトレーニングに関しては自分で行うこともできますが、歯科医師などの専門家による定期的なチェックを受けるのがおすすめです。
まとめ
舌は自由に動くため、正しい位置があるということを知らない人も多いでしょう。
しかし軽視することはできず、正しい位置からずれていると、悪影響があります。
無意識の状態で上顎に舌が接した状態が正常です。
接していない場合は低位舌といい、口呼吸や睡眠時無呼吸症候群の原因になったり、歯並びが悪化したりする原因になります。
舌の位置が正しいかセルフチェックしてみて、気になる場合にはMFTなどを受けて改善しましょう。
東京品川区五反田周辺で矯正治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
一人一人に合った治療方法をご提案させて頂きます。