インプラント治療は完了までにかなりの時間がかかるうえ、外科手術も必要になるため肉体的な負担が大きいです。
治療を受けようと思ったとき、あるいは治療を開始した後に妊娠が発覚した場合、身体に大きな負担がかかるインプラント治療を受けることはできるのでしょうか?
実は、妊娠中にインプラント治療を受けることはおすすめできません。
なぜおすすめでできないのか、理由を解説します。
目次
妊娠中のインプラント治療は避けるべき?
インプラントは天然歯に近い代用の歯を得ることができ、噛む機能を回復させるなど有益な治療です。
妊娠中にインプラント治療を受けることは絶対に不可能というわけではありませんが、避けるべきです。
また、インプラント治療の途中で妊娠が判明した場合には、中断せざるを得ません。
なぜなら、妊娠中は急激な体調の変化が珍しくなく、さまざまなリスクが存在するからです。
したがって、特別な事情がある方以外は避けた方がよいでしょう。
妊娠中は普段通りに生活することが困難になり、できないことが増えるケースがよくあります。
例えば、つわりが酷い方は歯磨きどころか食事も困難です。
歯科治療の際に口の中を触られたり、器具を入れられたりすることも難しくなってしまうでしょう。
また妊娠中は胎児にどのような影響があるかわかりません。
そのため、たとえ少量でも薬品の使用は避けてください。
インプラント治療には外科手術が必要です。
どうしても麻酔を使用しなくてはならないため、胎児への悪影響を考えるなら避けたほうがいいでしょう。
妊娠中にインプラント治療を受けるリスク

妊娠中にインプラント治療を受ける主なリスクとして、下記の6つが挙げられます。
・つわり
・仰向け寝
・長期間の通院
・出血
・レントゲンやCT
・麻酔や投薬
各リスクについて詳細を説明します。
つわり
妊娠6ヶ月以前の妊婦さんは、つわりなどの症状から吐き気に襲われることが一般的です。
ゆえに、つわりがある期間の歯科治療は難しいでしょう。
なお、多くの場合、妊娠12週目以降になるとつわりが軽減されますが、個人差があります。
つわりが起こっているときの治療は、妊婦さんの身体に大きな負担をかけるため、避けなければなりません。
つわりは人によってきっかけとなるものが異なりますが、多くの場合、口内に刺激を受けることで吐き気を催します。
歯を磨くことはもちろん、食事ですら吐き気がする人もいるため、それぞれに合わせて適切な対処が必要となるのです。
歯磨きができないと口内環境は悪化し、虫歯などのリスクが高まります。
そのため、インプラント治療よりも口内のケアを優先して考える必要があるのです。
仰向け寝
妊娠後、出産に向けてお腹は徐々に大きくなっていき、妊娠後期になると仰向けで寝ることが苦しくなるでしょう。
歯科治療は仰向けで行うため、身体に大きな負担がかかってしまいます。
妊娠後期の妊婦さんが仰向け体勢になる場合、仰臥位低血圧症候群という症状が発生するリスクが挙げられます。
胎児により母親の下大静脈が圧迫される可能性があるのです。
仰臥位低血圧症候群になると血流が悪化し、酷い場合には意識障害が起こる危険性があるため、無視することはできません。
長期間の通院
長期間の通院によって生じる負担もリスクの1つに挙げられます。
インプラント治療は、通常の歯科治療に比べて長い治療期間が必要です。
埋め込んだインプラントが顎の骨に定着するまでに長い時間を必要とするため、治療にかかる時間も長くなってしまいます。
およそ半年から1年ほど通院しなければならないため、健康な妊婦さんであっても体力を多く消耗することになるでしょう。
また、疲れが溜まり、通院を休まざるを得ないケースも考えられます。
治療を中断するため、適切なインプラント治療を受けられなくなる可能性が考えられるのです。
出血
インプラント治療には外科手術が必要です。
そのため、手術によって大量出血するリスクも存在します。
妊婦にとって出血は出産のメカニズムと大きく関わっているため、平常時の出血とは別の危険をはらんでいるのです。
なぜなら、出血が早産を引き起こす可能性があるからです。
母体の出血はホルモンの分泌作用をもたらします。
ホルモンの分泌が増えることで子宮を伸縮させ、赤ちゃんの出産を促すのです。
ところが、出産とは無関係の出血であっても脳が出産の合図だと誤認することがあるため、早産のリスクが高まります。
妊娠中は普段の体とはまったく違う状態となるため、普段であれば特に影響がないような出血量でも大きなリスクとなってしまうのです。
レントゲンやCT
インプラント手術の前に、血管や神経の位置、骨の量などを確認するべく、レントゲン撮影や歯科CTが必須です。
しかし、レントゲンや歯科CTを受けることによって、胎児に負担がかかってしまうというリスクがあります。
レントゲン撮影では放射線を浴びることになりますが、大人に対して悪影響がでない程度のごくわずかな線量です。
身体に悪影響を及ぼす被ばく量は200mSvなのに対し、一般的なレントゲンの被ばく量は0.06mSvと極少量しかありません。
しかし、大人なら問題なくても体の小さい胎児にとって同じ量を浴びるのは安全とは限らないのです。
安全性を重視するのであれば、妊娠中はレントゲンや歯科CTなど、緊急性がないものを受けるのは避けたほうが賢明です。
麻酔や投薬
妊婦が摂取した薬物は血管を通って胎児に影響を与えます。
通常、医療機関では胎児への悪影響を考慮し、処方された薬以外の薬を飲まないようにいわれるでしょう。
歯科治療でも麻酔を使わないケースがほとんどですが、インプラント手術では麻酔の使用が前提となるうえ、術後の投薬もあります。
どれだけ慎重にしても麻酔や投薬によるリスクは避けられないため、薬自体を避けることが最も確実といえるでしょう。
妊娠中に治療が必要なときの対処法
妊娠中のインプラント治療は避けた方がよいのですが、歯を失ったままの状態で生活するのは不便です。
そのため、妊娠中でも治療を受けなければならないケースもあるでしょう。
もし、妊娠中にどうしてもインプラントを受けなければならな場合には、タイミングを選ぶ必要があります。
治療ができるタイミングがあるとすれば、安定期と言われる妊娠5カ月〜7カ月頃ですが、個人差があるため一概にはいえません。
基本的には妊娠していることが分かれば治療を中止します。
もしも既に歯を抜いている場合であれば、仮歯を入れて処置し、噛む機能の回復だけを行うでしょう。
まだ妊娠はしていないが、現在妊活中であるという場合には、妊娠のタイミングと治療を中断、あるいは終えるタイミングについて、医師や歯科医師と相談してください。
インプラント治療と妊娠のどちらを優先するか、よく考えたうえで決める必要があります。
妊娠中であっても既に抜歯している場合には、とり急ぎ噛む機能を回復しなければなりません。
最後まで治療をするのは無理でも、いったん仮の歯を入れておくことで、見た目と噛む機能を一時的に回復させる必要があるのです。
インプラント以外で仮の歯を用意する方法としては、部分入れ歯やブリッジなど、隣の歯を支えとして歯を補う治療があります。
産後に母体が落ち着いて、通院に問題がなくなってからインプラント治療を再開することとなるでしょう。
まとめ
妊娠中は平常時と同じように過ごすことは困難です。
歯科治療についても普段通りに受けることはできず、仰向けになることには特にリスクがあります。
また、外科手術を受けて大量に出血すると早産のリスクも増すこととなります。
麻酔やレントゲン、歯科CTなどはお腹の赤ちゃんに悪影響を与えるかもしれません。
妊娠中は仮の歯を入れるだけにとどめ、出産後、落ち着いてからインプラント治療を再開しましょう。
東京品川区五反田周辺で矯正治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
一人一人に合った治療方法をご提案させて頂きます。


