事故や虫歯などで、歯を失うことは珍しくありません。
歯が失われたときは通常、ブリッジや入れ歯、インプラントなど歯の代わりになるものをつけるのですが、ごく限られたケースにおいて、自家歯牙移植による治療が可能となります。
自家歯牙移植とは何か、治療が可能な条件は何かを解説します。
自家歯牙移植とは？
子どもの頃に生えている乳歯とは違い、生え変わった後の永久歯は生え変わることはありません。
したがって、一度失われてしまうとそのままになります。
歯を失った場合、通常は歯の代わりになるインプラントや入れ歯、ブリッジなどを装着する必要があります。
しかし、一部のケースでは失われた歯を、自分の歯で補うことが可能です。
自分の歯で補う治療のことを、自家歯牙移植と言います。
自家歯牙移植とは、どのようなものでしょうか？
そもそも移植と聞いて思い浮かぶのは、心臓や腎臓などの臓器移植という人が多いのではないでしょうか。
また、広範囲にやけどをして植皮をするのも、移植の一種です。
歯も臓器や皮膚のように移植できるケースがあります。
ただし、歯の場合、それぞれ生える場所が決まっているため、歯が失われたからといって他の歯を移植すればいいというわけではありません。
そもそも、それでは別の歯がなくなってしまうだけです。
では、どうしたらいいのかというと、抜いても問題のない歯を移植すればいいのです。
抜いても問題のない歯とは、親知らずや余分に生えている過剰歯などです。
抜いたとしても特に影響はないため、移植できるのです。
自分の歯を抜いて移植することを、自家歯牙移植といいます。
その時に重要な意味を持つのが歯根膜です。
歯根膜には再生機能があり、移植されてから骨組織を造成して歯周組織を再生してくれるのです。
歯根膜が存在することによって、移植された先で歯を定着させることができます。
顎の骨とつながり、元の歯と変わらず生えている状態になります。
その結果、元の歯と比較した場合にも遜色なく使えるようになるのです。
自家歯牙移植ができる条件は？
歯が失われたとき、自分の歯でそれを補うことができる自家歯牙移植は便利な治療ですが、どのような場合でもできるというわけではありません。
自家歯牙移植ができる条件について、解説します。
すでに書いたように、自家歯牙移植は不要な歯がなければできません。
親知らずは上下2本ずつ、計4本生えてくるものですが、中には先天性欠如で生えてこない人もいるのです。
近年、親知らずが生まれつきない人が増えています。
女性の場合上顎は80％以上、下顎は70％以上の人がないという調査結果が出ているのです。
また、親知らずが歯肉に埋まったままという人も少なくありません。
親知らずはまっすぐ生えないことも多く、横向きや斜めに生えて他の歯を圧迫することもあります。
また、一部だけ露出し、大部分が歯肉に埋もれていることもあるのです。
横向きや斜めに生えたり、歯肉に埋没した親知らずは、しっかりと磨けません。
ゆえに、虫歯になりやすいのです。
そして、周囲の歯に虫歯が広がっていってしまう可能性も高くなります。
虫歯になると、歯はどんどん溶けていきます。
虫歯が進行することで歯はボロボロになり、強度も下がります。
その状態になった歯は、自家歯牙移植に使うことができません。
また、失われた歯と形が合っている必要もあります。
基本的に親知らずは奥歯なので、前歯とは形が合いません。
よって、前歯への移植は基本的にはできないのです。
だからといって、奥歯であればいいとも限りません。
奥歯や小臼歯などはそれぞれ形や大きさが異なるため、あまりにサイズが違うと移植は困難です。
また、親知らずは歯根の形状が複雑になっているものもあります。
そうした歯は、自家歯牙移植に使用することが難しく、できないケースもあります。
歯の根の形が1本でまっすぐ等シンプルであれば、歯根膜を傷つけずに抜歯できます。
移植する歯に歯根膜が十分あるというのも条件の1つです。
歯周病になっている歯は、歯根膜が破壊されてしまい十分な量がないことが多いため、移植できない可能性が高くなります。
歯の移植を成功させるには、歯根膜が重要です。
十分な再生能力を発揮できなければ、うまく結合できずに不自然な形で癒着してしまうことがあるからです。
不自然な形で癒着すると、顎の骨はその歯を異物として認識し、体から排除するためにゆっくりと歯根を溶かしていくのです。
移植した歯は、歯茎としっかり合わせて、なるべく動くことがないように固定する必要があります。
固定が甘いと、歯根膜の再生能力が十分に発揮されません。
まとめ
歯を失った時の対処方法は、ブリッジやインプラントなどの代替物を装着するという方法の他に、親知らずなどを移植する自家歯牙移植という治療もあります。
自家歯牙移植はできるケースが限られているものの、可能な場合は元々の歯とあまり変わらない感覚で使えるので、非常に便利です。
ただし、歯周病などで歯根膜が破壊されていると移植しても定着しないことがあります。
限られたケースのみ可能な治療法であることに注意しましょう。
東京品川区五反田周辺で矯正治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
一人一人に合った治療方法をご提案させて頂きます。