一部の歯を短期間で矯正したいという場合は、部分矯正という方法が向いているのですが、どのような歯並びにも適しているというわけではないのです。
部分矯正には闇と呼ばれる部分があり、よく知らないまま選択してしまうと非常に危険となる可能性もあるでしょう。
部分矯正の闇とは何か、何が危険なのかを解説します。
全体矯正と部分矯正の違い
部分矯正というのは、前歯など一部の歯だけを動かして歯並びを整える方法のことで、主に前歯を中心として見た目が気になる数本の歯のみ矯正するのです。
全体矯正の場合は、上下の歯全体のバランスを整えるための治療であり、一部の歯だけではなく全体の歯並びを調整します。
部分矯正が注目される最大の理由は費用の安さと治療期間の短さであり、矯正治療を受ける人にとっては魅力的な便益です。
しかし、便利でメリットがある裏には多くの人が知らないリスクも隠れていることを知っておいてください。
部分矯正のデメリットとして、まずは噛み合わせが悪化する危険性があるのですが、なぜ噛み合わせが悪くなるのでしょうか?
そもそも歯は独立して存在しているわけではなく、上下の歯が互いに影響し合う咬合システムの一部として存在しています。
上の前歯だけを動かすことで下の歯と干渉して奥歯が噛み合わなくなったり、前歯の位置が変わることで顎の動きに影響が出たりすることがあるでしょう。
また、歯ぎしりや顎関節症などの症状が現れることもあり、部分矯正を受けてから食事がしにくくなったという人もいます。
何らかの異常が生じてしまえば、改めて全体的な歯並びを調整する必要があるため、時間も費用も余分にかかってしまうでしょう。
また、一部の歯だけを動かしてバランスを考慮しないため、思わぬ副作用が生じて顔のバランスが崩れることもあります。
例えば、凸凹の前歯を整えたことで口元が前に出て口ゴボが強くなったり唇の形や閉じ方に違和感が生じたりすることがあるでしょう。
矯正治療は単に歯並びを治すだけではなく、顔全体の美しさを引き出す治療でもあるという点も欠けています。
一時的に歯並びを改善できてもそもそもの原因に対処しないため、元に戻りやすい傾向があるのです。
後戻りが起こる主な理由としては、全体の咬合バランスが取れていないため不安定であることや舌の位置や口腔習癖の改善がなされていないことなどがあります。
また、矯正力のかかる範囲が限定的であるため、安定性に欠けるというのも後戻りしやすい原因の1つでしょう。
使用できる矯正装置も限られていて、技術的にも制限がかかってしまうため歯の動かし方も限られてしまい、十分に歯を動かせず原因を解消することができません。
結果として、矯正治療を受けたのに思ったほど綺麗にならなかったという不満を抱える方が少なくないのです。
また、部分矯正は安いといわれているのですが、実際には様々な追加費用が発生するケースもあります。
よくある追加費用としては、調整料が診察ごとに別途請求されたりリテーナー代として約10〜15万円が請求されたり、後戻り修正のための再治療費がかかるのです。
場合によっては全体矯正を改めて行う必要が生じてしまい、追加で費用がかかることもあるため、合計は高くなってしまいます。
部分矯正だけなら確かに費用は安く済むのですが、後から全体矯正も必要になってしまえば費用は倍以上かかることになるでしょう。
結果的に安い部分矯正に追加費用と全体矯正のやり直しが加算されて、最初から全体矯正を選んだ場合よりも総額で80〜200万円も高くなることもあるでしょう。
歯の動きが不自然になりやすいため、歯根が吸収される可能性が高くなり一部の歯にだけ強い力がかかることで歯周病リスクも高くなります。
また、不正な噛み合わせだと歯の摩耗や咬合性外傷が起こることもあり、将来的に長く歯を健康に保つのであれば全体矯正の方が確実といえるでしょう。
部分矯正は、治療を終えてから時間が経つにつれてだんだんと不満が増えてくるという傾向があります。
満足度が下がるのは後戻りや噛み合わせの問題が時間とともに顕在化してくることが原因で、最初から全体矯正にすればよかったという人もいるでしょう。
部分矯正で治療可能かどうかを見極めるには、非常に専門的な判断が必要となるのですが、なぜ判断が難しいのかを解説します。
まず、見た目の問題か機能的な問題かの区別が難しく、奥歯の噛み合わせ状態の正確な診断も困難です。
将来的な歯の移動予測もズレが生じることが多いため、専門的な知識に基づいて慎重に判断する必要があるでしょう。
部分矯正を行った後に全体矯正が必要になった場合は治療が複雑化することがあり、例えば歯の動きが予測しにくくなったり、治療期間が延長したりする可能性があります。
より複雑な装置や技術が必要になることもあり、最悪若くして入れ歯やインプラントが必要になるなど、気軽に選ぶと将来の後悔につながるかもしれないのです。
ごく稀に部分矯正が適していることも
デメリットばかり強調しましたが、ごく一部のケースでは部分矯正が適していることもあります。
適しているのは、補綴前の限定的な歯の移動、埋伏歯の牽引、抜けた歯の治療の調整などです。
また、生えてこない歯を引っ張り出す目的での矯正や全体矯正後の軽微な後戻り修正、以前に全体矯正を行った方の小さな後戻り修正などにも向いています。
ただし、非常に限定的なケースでしか適しておらず、前歯だけ治したいという最も多いケースには適していないのです。
部分矯正のデメリットを知った上で全体矯正の治療方法について検討するのであれば、いくつかの選択肢があります。
まずは裏側矯正、あるいは舌側矯正という歯の裏側に装置をつける方法で、外からは見えないというメリットがあるのです。
特徴としては、装置が見えない、歯並びのバランスを考えて治療できる、顔のバランスも含めた総合的な改善などがあります。
矯正治療中も人と接することが多いという人や、見た目をとにかく優先したいという方には特に人気です。
従来の表側矯正も、白いセラミックブラケットを使用することで目立ちにくくなっています。
調整がしやすく、効率的な歯の移動が可能な方法であり、複雑な症例にも対応可能で裏側矯正より費用が抑えられる場合もあるでしょう。
透明なマウスピースを使った矯正方法も、全体のバランスを考慮した治療計画で行うことが重要となります。
マウスピース矯正は取り外しが可能で衛生的であり、目立たずに矯正治療が可能で軽度から中度の症例に適している方法です。
費用に関してはどの方法を選んだ場合でも高くなるのですが、今だけではなく将来のことも考えると結果的に満足度の高い選択といえます。
矯正治療の本当のコストについて
部分矯正のデメリットを考える上で、コストというのは重要なポイントとなるのですが、表面的な金額だけでなく長期的な視点で考えてみるとどうなるのでしょうか?
初期費用を比較すると、治療方法によって異なりますが部分矯正は約30〜50万円であるのに対し、全体矯正は3倍かかります。
一見すると部分矯正の方が安く見えるのですが、後戻り修正のための再治療費や噛み合わせ問題による歯科治療費、全体矯正のやり直し費用なども考慮した方が良いでしょう。
後からやり直しが必要になってしまった場合は、最初から全体矯正を選んだ場合と比べて平均1.5倍のコストがかかるといわれています。
まとめ
部分矯正は矯正治療の中でも治療にかかる期間が短く、治療費も安いため希望する人は多いのですが、実はあまりおすすめできないのです。
部分矯正は噛み合わせの調整などができず後戻りもしやすいというデメリットがあり、結局全体矯正をやり直すケースも珍しくありません。
部分矯正を受けてから改めて全体矯正をした場合、最初から全体矯正をするよりも治療費が高くなってしまうでしょう。
東京品川区五反田周辺で矯正治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
一人一人に合った治療方法をご提案させて頂きます。