高齢者の方に起こりやすく、時には命に関わることもあり、災害時に特に注意が必要となる病気が誤嚥性肺炎です。
しかし、誤嚥性肺炎が具体的にどのようなもので、なぜ命に関わることがあるのか知らない人も多いでしょう。
今回は、誤嚥性肺炎とはどのような病気なのか、解説します。
誤嚥性肺炎はどのような病気?
肺炎といえば、風邪の悪化などにより、肺にウイルスや細菌が侵入してかかる病気というイメージが強いのではないでしょうか?
実は、誤嚥性肺炎は風邪の悪化などによりかかるわけではありません。
食べ物や飲み物、口内にいる細菌などの異物が誤って気道に侵入することで起こる肺炎のことを言います。
誤嚥とは誤った嚥下のことです。
誤嚥によって肺に異物が入ることで肺に感染し、炎症が起こります。
誤嚥性肺炎は、年齢を問わずかかる可能性がある病気です。
中でも高齢者や病気で免疫力が低下している人などは重篤化しやすく、場合によっては死亡することもあります。
誤嚥が起こるケースとして多いのは、食事をしているときや飲み物を飲んだときなどに、誤って食道ではなく気管に入ってしまうことでしょう。
本来、口から入った食べ物や液体は食道に入って胃まで送られていきますが、飲み込むときに何らかの原因で気管に入ってしまうことがあります。
誤嚥が起こると細菌の繁殖を助長してしまい、肺に感染を引き起こす原因となるのです。
誤嚥性肺炎は肺に起こる病気であることから、歯科とは関係ないように思うかもしれません。
しかし、歯科と誤嚥性肺炎には深い関係があります。
誤嚥性肺炎が起こる要素として最も重要なのが口腔内の細菌です。
口内には常に細菌が存在しているため、避けることはできません。
口内に存在している細菌にはさまざまな種類があり、食べ物や飲み物を摂取すると増殖します。
虫歯や歯周病などの原因となる細菌も、飲食物の摂取によって増殖するのです。
細菌が増殖すると聞くと不安に思うかもしれませんが、基本的には心配無用です。
通常、細菌は口内の洗浄をした際に除去されるか、唾液とともに飲み込まれ消化器官へと運ばれていきます。
しかし、十分に歯磨きをしていなかったり歯周病が悪化していたりすると、口内の細菌が増え、誤嚥によって肺に侵入すると誤嚥性肺炎の原因になってしまうのです。
虫歯や歯周病を放置していると、歯や歯茎にはバイオフィルム(細菌が集まって膜になったもの)が形成されます。
細菌にとっては増殖しやすい良好な環境になりますが、人間は要注意です。
特に高齢者は誤嚥性肺炎になりやすく、加齢に伴う免疫力や嚥下機能の低下が原因となって発症しやすくなります。
さらに、高齢になると唾液の分泌量が減少することも、注意が必要な理由の1つです。
口内が乾燥しやすくなり、細菌が繁殖しやすくなるでしょう。
細菌が増殖すると口内の健康が悪化して機能が衰えるため、誤嚥が起こりやすくなることがあります。
高齢者の中には入れ歯を使用している人も多いでしょう。
しかし入れ歯が誤嚥性肺炎を引き起こすことがあるため、注意が必要です。
なぜなら、入れ歯の洗浄が不十分なケースがあり、細菌も増殖しやすくなるからです。
入れ歯をきちんと洗浄しないまま使用し続けていると細菌が繁殖し、誤嚥が起こったときに肺へ入り込んでしまうかもしれません。
誤嚥性肺炎を予防するには

誤嚥性肺炎は、口内の健康を維持することである程度予防することができます。
ただし、セルフケアだけでは十分とはいえないでしょう。
重要となるのは、歯科医院での定期的なチェックアップに加え、専門的な機械的清掃(PMTC)による歯垢や歯石の除去です。
歯垢は細菌の塊であり、時間が経つと歯石になってしまいます。
その内部では虫歯や歯周病の原因となる細菌を含む、さまざまな細菌が増殖しているのです。
歯科医院で歯磨きでは落としきれない汚れまでしっかりと除去できれば、歯垢の増殖抑制につながるだけでなく、虫歯や歯周病を予防できます。
特に、高齢者の場合は定期検診に加えて、クリーニングも受けた方が良いでしょう。
定期検診時に歯科医師が口内をしっかりチェックするため、歯周病になったときも早期に発見して治療できます。
歯周病になると口内の細菌が増えやすくなるため、早期治療が肝要です。
早い段階で発見できれば、細菌を減らし、誤嚥性肺炎を予防できるでしょう。
自宅で口腔ケアを継続して行うことも、誤嚥性肺炎の予防には欠かせません。
基本は毎日の歯磨きですが、入れ歯の場合は要注意です。
入れ歯に付着した食べかすは、細菌が増殖する原因になります。
誤嚥も起こりやすくなるため、毎日しっかりと清掃しましょう。
入れ歯を専用の歯ブラシで毎日磨くことは重要ですが、それだけでは十分に汚れが落とせないため、天然歯と同様に、デンタルフロスや歯間ブラシなども使用した方が良いでしょう。
デンタルフロスや歯間ブラシを使用すると、歯の間に挟まった汚れや細菌なども取り除くことができます。
また、定期的に入れ歯用洗浄剤を使用してください。
誤嚥性肺炎を防ぐためには、嚥下機能の回復も重要です。
加齢に伴い嚥下機能が低下するため、高齢者は誤嚥性肺炎が起こりやすいのです。
嚥下訓練やリハビリテーションを行うことで、機能が回復するケースもあります。
歯科医師や医師と連携して訓練を行い、嚥下機能を回復することができれば誤嚥のリスクを減らすことができるでしょう。
食事の際に適切な姿勢を保つ、食べ物の切り方を工夫するなどの方法でも誤嚥を予防することができます。
特に、食事の際は急いで食べるのではなく、ゆっくりと食べるようにすることで、誤嚥を起こりにくくすることができるでしょう。
誤嚥性肺炎のサインは?
誤嚥性肺炎になった場合は、次のような典型的な症状が表れます。
該当するものがある場合には、注意しましょう。
誤嚥性肺炎の主な症状は次のとおりです。
・発熱や激しい咳
・黄色い痰が出る
・呼吸が苦しい
・呼吸の際に肺から雑音がする
など
上記はいずれも風邪と似たような症状です。
そのため、診断を受けたときに風邪と間違われることもよくありますが、高齢者の場合には誤嚥性肺炎も疑いましょう。
また、肺炎とは直接関係がなさそうな症状が出たときも、高齢者であれば誤嚥性肺炎の可能性があるため、注意してください。
例えば、普段より元気がない、食事にかかる時間が普段より長くなっている、急激に疲れが出てぐったりとする、ぼんやりするなどの場合が当てはまります。
他に、失禁することがある、食べ物を口に含んでいるのになかなか飲み込めない、体重が減少する、夜中に咳き込むなどの症状も、該当する可能性があるため、留意しましょう。
重要なのは、日常生活に何か変化がないか、注意深く見守ることです。
当てはまる兆候がみられたら、すぐにかかりつけの医師や病院に相談すると誤嚥性肺炎の早期発見につながります。
誤嚥性肺炎になっても治療せずに放置していると死亡するケースもあるため、兆候があったときはなるべく早く受診してください。
まとめ
誤嚥性肺炎は、通常の肺炎とは違い、飲み込んだものが食道ではなく誤って肺に侵入することで発症することがあります。
特に口内が不潔な状態だと、口内の細菌が肺に侵入することが多いです。
そのため、口内を清潔に保つことが、誤嚥性肺炎の予防につながります。
それだけでなく、虫歯や歯周病予防にもつながるため、日々の口内ケアが大切です。
誤嚥性肺炎と風邪は区別が難しい点もあるため、主な症状を覚えておき、当てはまる場合はすぐに診断を受けましょう。
東京品川区五反田周辺で矯正治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
一人一人に合った治療方法をご提案させて頂きます。


