失った歯を補う選択肢として近年人気のインプラントですが、実は喫煙が最も重大な失敗リスクとして挙げられます。
実際の統計を見ても、喫煙者の失敗率は非喫煙者の約2倍にまで跳ね上がるといわれているのです。
これほどタバコがインプラントへ悪影響を及ぼす背景には、一体どのような原因があるのでしょうか。
今回は、喫煙がインプラントに及ぼす影響の詳細から、その原因、そして治療を成功させるために押さえておきたいポイントまで詳しく解説します。
喫煙がインプラントに及ぼす影響は?
タバコの煙に含まれる化学物質は、ニコチンやタール、一酸化炭素など数千種類に及びます。
これらの成分が口内環境や全身の血管に作用し、インプラント治療のあらゆるプロセスにおいて悪影響をもたらすのです。
なかでも喫煙後わずか数秒で全身を巡るニコチンには、強い血管収縮作用があります。
この作用により歯茎の毛細血管が急激に縮み、血流が著しく阻害されてしまうのです。
インプラント手術の後は、傷口の治癒や骨との結合を促すために、大量の酸素や栄養を含んだ血液が欠かせません。
それにもかかわらず血流が阻害されてしまうと、手術部位に十分な栄養が行き届かなくなり、傷の治りや骨の再生に大幅な遅れが生じます。
加えて、タバコの煙に含まれる一酸化炭素は、血液中で酸素を運ぶ役割を持つヘモグロビンと非常に結びつきやすい性質を持っています。
ヘモグロビンと結びつく強さは酸素の約200倍も大きいため、酸素を奪われた組織は慢性的な酸欠状態に陥ってしまうのです。
毛細血管の収縮にこの酸欠状態が重なって、インプラント周囲の組織は極めて過酷な環境にさらされてしまいます。
悪影響はそれだけにとどまらず、口内の免疫力低下につながる点も大きな問題です。
通常、口の中に常在する無数の細菌に対し、血液中の白血球が身体を守るべく戦っています。
しかし、喫煙はこの白血球の力を弱め、細菌の元へ駆けつける能力や、細菌を取り込んで破壊する能力を著しく低下させてしまうのです。
免疫の要が機能しなくなれば、当然ながら傷口から細菌が侵入しやすくなり、化膿をはじめとする術後感染症のリスクが急上昇しかねません。
あわせて注意したいのが、喫煙が自律神経を刺激することで引き起こされる唾液の減少です。
本来、唾液には細菌を洗い流す自浄作用や増殖を抑える抗菌作用が備わっています。
唾液が減って口の中が乾くと、歯周病菌などの細菌が爆発的に増殖し、インプラント周囲炎を誘発する原因になってしまうのです。
喫煙者の具体的なリスク

喫煙の習慣があるままインプラント治療に臨むと、さまざまな局面で具体的なトラブルを招く恐れがあります。
治療における最大のハードルとなるのが、顎の骨とチタン製のインプラント体が直接強固に結合する「オッセオインテグレーション」の成否です。
非喫煙者なら2~6ヶ月できれいに結合するこのプロセスが、喫煙者の場合には血流不足と酸欠が原因となり、骨を作る骨芽細胞がまともに活動できません。
結果として、数ヶ月待ってもインプラントが固着せずグラグラと不安定なままで、最悪の場合は一度も機能せずに抜け落ちる初期失敗を招く恐れがあります。
さらに、無事に骨と結合し、上部構造と呼ばれる人工の歯を被せた後も決して安心はできず、常にインプラント周囲炎のリスクと隣り合わせになります。
インプラント周囲炎とは、いわば「インプラント版の歯周病」であり、治療後も長期にわたって脅威となり続ける最大の敵と言えるでしょう。
インプラントには、歯根膜をはじめとする天然の歯に備わった細菌への防御壁がないため、一度感染すると急速に骨が溶けてしまいます。
特に喫煙者は口内環境が悪く免疫力も低いため、その発症率は非喫煙者の3~4倍に達するというデータもあり、決して軽視できません。
インプラントは通常、1本あたり数十万円かかる高額な自由診療だからこそ、多くの歯科医院では10年保証などの長期保証制度を設けています。
しかし、実際の適用には定期メンテナンスへの通院などが必須条件であり、喫煙を続けている場合は「保証対象外」や「保証期間の短縮」と明記されているケースが少なくありません。
つまり、喫煙が原因でインプラントが抜け落ちてしまった場合、再手術にかかる費用はすべて自己負担になってしまうリスクがあるという点を理解しておく必要があります。
「紙タバコは煙が出るからダメだけど、アイコスやプルーム・テック、グローなどの加熱式タバコ、あるいはVAPEなどの電子タバコなら大丈夫かもしれない」と考える方は非常に多くいらっしゃいます。
しかし結論からお伝えすると、加熱式タバコであっても、インプラント治療においては紙タバコと同様にNGとされています。
加熱式タバコはタールが出ないため歯が汚れにくく、一酸化炭素の発生量も低く抑えられているのは確かな事実です。
それでも、インプラントの結合を阻害する最大の邪魔者であるニコチンは、しっかりと含まれており、血管を収縮させてしまうことに変わりはありません。
つまり、これらの新型タバコであっても、骨との結合不全やインプラント周囲炎を招くリスクは、紙タバコとほとんど変わらないことになります。
また、ニコチンを含まない日本国内の一般的な電子タバコ(VAPE)なら安心かというと、現状では悪影響がないとは言い切れません。
なぜなら、蒸気に含まれる数々の化学物質が、デリケートな手術直後の歯茎にどのような影響を与えるか、まだ安全性が完全に立証されていないためです。
このような背景から、外科手術を無事に成功させるためには、製品のタイプを問わずあらゆるタバコを避けるのが賢明と言えるでしょう。
インプラント治療を成功させるために
インプラント治療を希望するなら一生涯の完全禁煙がベストですが、難しい場合でも、治療の前後だけでも本気で禁煙に取り組まなければなりません。
目安となるタイミングとして、まずは手術の2週間~1ヶ月前には禁煙を開始し、あらかじめ血管や血流を回復させておく必要があります。
手術当日だけタバコを我慢しても、お口の環境や血流はすぐには元に戻らないからです。
長年の喫煙によって傷ついた組織が正常な治癒力を取り戻すためには、最低でも2週間、できれば1ヶ月の準備期間を設けなければなりません。
この術前の準備があって初めて、手術時の出血を抑え、術後の感染リスクを下げることができます。
こうして無事に手術を終えた直後から、顎の骨とインプラントはミクロのレベルで「初期結合」を始めます。
しかし、この結合が進む非常に重要な時期にタバコを吸ってしまうと、そのプロセスが完全にストップする恐れがあるのです。
インプラントが骨にしっかりと固定されるまでの約2~3ヶ月間は、初期の結合において極めて重要な時期となるため、「絶対に1本も吸わない」という強い意志が必要となります。
それ以降は禁煙を無理強いすることはありませんが、インプラント周囲炎を予防するためには、できるだけ禁煙を守るのが賢明です。
せっかく入れたインプラントを一生モノとして長持ちさせるためにも、しっかりと禁煙を行って健康な歯茎をキープしましょう。
まとめ
タバコに含まれるニコチンには強い血管収縮作用があり、歯茎の毛細血管を急激に縮ませてしまいます。
さらに、一酸化炭素はヘモグロビンと結びつきやすいため、組織が深刻な酸欠状態に陥ってしまうのです。
こうして血流不足と酸欠状態が引き起こされると、骨を作る骨芽細胞が十分に機能せず、インプラントが骨と結合しにくくなります。
仮に結合したとしても、その後はインプラント周囲炎という大きなリスクから逃れることができません。
東京品川区五反田周辺で矯正治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
一人一人に合った治療方法をご提案させて頂きます。


