歯科医院の窓口で医療費を支払うとき、「思ったよりも高いな」と首をかしげた経験はありませんか。
「もしかしたらぼったくられたのではないか」などと考える人もいるかもしれませんが、これは大きな誤解です。
保険診療の価格は歯科医院が決めているわけではなく、国が全国一律で定めているため、不当な請求は行えません。
そこで今回は、意外と知られていない保険診療のルールやぼったくりだと感じてしまう原因、さらに納得して支払うための自己防衛策について詳しく解説します。
医療費のルール
日本が採用しているのは、すべての国民がいずれかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」という仕組みです。
これに基づく医療行為を「保険診療」と呼び、その価格は医療機関の裁量では決められず、すべて国によって一律に定められています。
また、保険診療の価格は「診療報酬」や「公定価格」といいますが、その料金表が金額ではなく「点数」で表記されていることをご存じでしょうか。
国が定めたルールにより1点あたり10円と法律で固定されているため、例えば初診料が291点なら日本全国どこのクリニックでも一律で2,910円となります。
患者様はここから自身の年齢や所得に応じた負担割合、一般的な現役世代であれば3割に当たる870円を窓口で支払う形です。
診療報酬は2年に1度、厚生労働省や中央社会保険医療協議会によって改定されるため、ずっと同じ金額のまま固定されているわけではありません。
国の財政状況や物価の変動、医療技術の進歩に加えて、特定の検査や処置を普及させる目的などで点数が引き上げられたり、逆に引き下げられたりします。
したがって、以前と同じ治療内容であっても、時期が変わったら会計が高くなっていたという現象が起こることも珍しくありませんが、この変更を行ったのは医療機関ではなく国です。
それに加えて、全く同じ処置であっても、医療機関の設備や人員配置、過去の実績などによって国から追加の点数を請求することが認められています。
該当するのは、手厚いカウンセリング体制を整備している、高度な感染症対策設備を導入している、地域の夜間・休日診療に貢献しているといった医療機関です。
しかし、患者様の多くはこの事実をご存じありません。
だからこそ、「他院と全く同じ治療をしたはずなのに高かった」という不満や不信感につながってしまうのです。
何故ぼったくられたように感じるのか

数ある医療機関の中でも、特に歯科医院は「何度も通院させられて費用を搾取されている」といった不満が集中しやすい特徴を持っています。
そう感じる背景に潜んでいるのは、歯科特有の診療報酬体系と、経営上の収益構造です。
歯科に対する最大の不満の1つとして、「1回の治療が15〜30分程度で終わるせいで何度も通院せざるを得なくなる」という点が挙げられます。
「一気に治療を進めてくれれば通院回数が減って再診料なども浮くのに、そうしないのはわざと引き延ばして回数を稼いでいるからだろう」と邪推してしまうのも無理はありません。
しかし、もちろん意図的に治療を小分けしているわけではなく、そこにはきちんとした理由があります。
大きな原因となるのが、国の定める診療報酬の構造です。
日本の保険診療における歯科の処置点数は、1回あたりの行為に対して驚くほど低く設定されています。
いくら時間をかけてたくさんの処置を施しても、医療機関側にはその労力に見合った技術料が支払われない仕組みになっているのです。
例えば、重度の虫歯で根管治療を行う場合、1回に1時間かけて丁寧に処置をしても、15分の処置を4回に分けても医療機関が国から得られる総点数はほとんど変わりません。
それどころか、1回に長時間の枠を確保している間は他の患者様を診ることができないため、人件費などの経費で赤字になってしまいます。
つまり、歯科医院が経営を維持するためには患者様を30分単位の枠で案内し、複数回に分けて来院してもらう「細切れ診療」を選択せざるを得ないという構造的な背景が存在するのです。
さらに、日本の保険診療において歯を削る、抜く、根の掃除をするなどの職人技に対する技術料が、諸外国に比べて極めて低く据え置かれていることも理由に挙げられます。
歯科医師がどれほど高度な技術を駆使して歯の神経をきれいに掃除したとしても、国から支払われる点数は数百円から数千円程度に過ぎません。
もしも3割負担であれば、患者様が窓口で支払う金額はわずか数百円にしかならない計算です。
このように報酬があまり低いと、治療に使用する滅菌器具の準備や人件費、水道光熱費を賄うだけで赤字になってしまい、経営を圧迫してしまいます。
この赤字分を補うため、日本の保険診療は金属の詰め物や被せ物を装着した際に、まとまった点数が算定できるよう設計されているのが特徴です。
すなわち、歯を丁寧に治すプロセスではほとんど利益が出ず、詰め物などを装着する段階でようやく利益を回収できる収益構造になっています。
そのため、患者様からすると大したことをしていないように見えるのに、最後に銀歯を入れた途端に料金が跳ね上がるため、まるで騙されたかのような不信感を抱く原因になってしまうのです。
加えて、歯科は一般医療に比べて保険適用外の自由診療の選択肢が非常に多い診療科であり、国が定める保険診療はあくまで最低限の機能回復を目的としています。
見た目の美しさや、より長持ちする素材を求めた場合には、途端に全額自己負担の自由診療にせざるを得ません。
実際に一部の歯科医院では、保険診療の利益率の低さを補うために、セラミックやインプラントなどの自由診療を強く勧めるケースが散見されます。
こうした強引なセールスや保険と自費の境目の説明不足が、患者様に「ぼったくられそうになった」という恐怖心や不快感を与える一因となっているのです。
不審に思われやすい仕組みと自己防衛策
診療報酬と歯科の構造以外にも、現代の医療費請求には患者様が不審感を抱きやすいポイントがいくつか存在しています。
例えば電子カルテの普及により、診療明細書には全ての処置や管理料が細かく自動印字されるようになったこともその1つです。
身に覚えのない管理料や指導料などの項目がたくさん並んでいると、あたかも水増しされているかのように感じてしまうでしょう。
特にこれらは医師や歯科医師が患者様に対して口頭で説明や指導を行ったことで発生するもので、形のある薬や処置とは異なります。
そのため、患者様側は「少し話しただけ」という受け止め方になり、明細書を見たときに架空請求ではないかと誤解してしまいがちです。
その典型例が処方箋の発行に伴う調剤基本料や、次回の予約・治療計画を管理する歯科疾患管理料などで、目に見えないサービスや丁寧な情報提供に対しても点数が算定される仕組みになっています。
しかしこれらは、患者様への適切な情報提供や手厚い管理を評価する目的で国が正式に設定した公定価格項目であり、決してぼったくりなどではありません。
このような仕組みを知らなければ「説明を受けて紙をもらっただけなのに、なぜこんなに高いのか」という不満を抱くのも仕方のない話と言えます。
さらに、世界的なレアメタル価格の高騰に連動し、保険診療の銀歯に使われる金銀パラジウム合金の点数が頻繁に引き上げられていることも見逃せない事実です。
「昔に比べて銀歯の治療費が明らかに高い」と実感している方は少なくありませんが、実はこれでも診療報酬の引き上げが素材の高騰に追い付かず医療機関側が赤字になっているケースもあります。
そもそも医療機関が国の定めた診療報酬を破って不正な水増し請求をした場合、非常に重いペナルティが課せられます。
万が一発覚した場合には保険医の指定取消に追い込まれてしまうため、通常の医療機関がわざわざリスクを冒してまで不正を行うことはまずありません。
それでも請求額に納得がいかない場合の対処法として、まずは窓口で項目ごとにどのような内容なのか遠慮なく聞いてみましょう。
受付での会計時に、手渡された診療明細書を見ながら分からない項目を質問すれば、医療機関側には患者様に対して内容を説明する義務があるからです。
もしここで明確な説明を拒むようなら、不親切な医療機関として今後の転院を検討する1つの指標になります。
どうしても相手の説明に納得がいかない場合や、明らかな不正請求の疑いがあるときは、国や自治体が用意している相談窓口を利用するのがおすすめです。
例えば医療安全支援センターは各都道府県や保健所を設置する市区に配置されており、医療に関するさまざまな苦情や相談を受け付けています。
また、地方厚生局は医療機関の指導や監査を行う国の機関ですので、明確な不正の証拠があって通報したい場合の確実な連絡先です。
まとめ
日本の保険診療は国が定めた診療報酬という厳格なルールに従って行われており、治療ごとに料金が決まっているため、勝手に水増しや加算をすることはできません。
それにもかかわらず歯科で「ぼったくられた」と感じる人が多いのは、複数回に分けて通院する必要がある点や、詰め物・被せ物を入れた段階でまとめて費用が発生する収益構造が原因です。
もしどうしても不当な請求が疑われる場合には、泣き寝入りをせずに医療安全支援センターや地方厚生局といった信頼できる行政の力を借りることをおすすめします。
東京品川区五反田周辺で矯正治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
一人一人に合った治療方法をご提案させて頂きます。


