矯正歯科

【五反田の矯正歯科】光加速装置の効果について、エビデンスをもとに解説してみた

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近年、人気の高まりとともに普及が進むマウスピース矯正ですが、光加速装置を使用すれば治療期間を短縮できるという話を耳にすることがあるかもしれません。
ところが、医療先進国の専門学会や大規模な臨床研究では、その効果に対して否定的な見解が示されています。
そこで今回は、光加速装置の基本的な仕組みに触れつつ、確かなエビデンスから見えてくる本当の効果を解説します。

光加速装置とは?

医療分野で「低レベル光療法」や「光生物変調」と呼ばれる技術を応用し、主に800~900ナノメートル前後の近赤外線を毎日数分間歯肉に照射する機器が光加速装置です。

この装置の医学的メカニズムとして、肯定派はミトコンドリアの活性化とATPの増産を挙げています。
その背景にあるのが、細胞における代謝スピードの向上です。
近赤外線が細胞内にあるミトコンドリアの酵素に吸収されると、細胞のエネルギー源であるATPの産生が活発になり、結果として細胞全体の代謝が加速します。
そもそも歯が動くためには、進行方向の骨が溶けて通過した後の隙間に新しい骨が形成されるという、骨のリモデリングが必要です。
光照射は骨代謝サイクルを活性化させてリモデリングを速めるため、結果的に歯の移動速度が上がるといわれています。

また、痛みの緩和も光加速装置の使用によって期待される効果の1つです。
矯正初期にみられる締めつけられるような痛みは、歯根膜の圧迫による血流不足や炎症物質の停滞が原因ですが、近赤外線には血管を拡張させて局所の血流を促す作用が備わっています。
血流が改善されると痛みの原因物質が素早く洗い流されるため、不快感が大幅に軽減されると考えられているのです。

実際に、肯定派の歯科医師やメーカーが提示する論文、データでは、いくつかの具体的な効果が言及されてきました。
一部の臨床研究によると、光加速装置を併用することで通常10~14日ごとに交換するマウスピースが、3~7日という非常に短い周期で交換可能になったとのことです。
1回あたりの交換サイクルが短縮されることで、総治療期間が2年から1年前後に縮まるケースもあると主張されています。

さらに、視覚的評価スケール(VAS:Visual Analogue Scale)を用いた複数のランダム化比較試験(RCT)においても、光加速装置の有意性が示唆されました。
この試験が示したのは、光加速装置を使用したグループが、使用しなかったグループや偽の装置を使ったグループよりも装置装着後24~48時間の痛みのスコアが低かったというデータです。
このような海外の知見を判断材料として、デジタル技術を駆使するモダンな矯正歯科クリニックでは、インビザラインなどのシステムと組み合わせて標準的に導入する動きが本格化しています。

否定派・慎重派の反論

五反田駅前歯医者 
前述の研究結果などをエビデンスとして、光加速装置には十分な効果があると主張する派閥も少なからずある一方、世界最高峰の医療評価機関や各国の主要な矯正歯科学会は、その「治療期間短縮効果」に対して極めて冷ややかな見解を示しています。

否定派が注目するのは科学的アプローチの厳格さであり、装置の効果を検証した高品質な研究では、明確な有意差は見られません。

そもそも医療におけるエビデンスには厳格な格付けがあり、1つのクリニックやメーカーが関わった限定的な論文は質の低いデータとして扱われがちです。
これに対して、複数の厳格な研究をまとめて分析する「メタアナリシス」や「システマティックレビュー」こそが、最も信頼できる情報源とされています。

実際に、世界で最も信頼される医療評価機関である「コクラン」が矯正治療の加速を目的とした光加速装置を含む非侵襲的デバイスを調査した際も、歯の移動をはっきりと早めるような質の高い証拠は認められなかったと報告されました。

さらに、世界をリードする多くの学会も、毎日の治療で当たり前のように全員に勧められるほどの、確実で決定的なデータが不足していると指摘しています。
肯定的な結果を示している論文の多くは、被験者の数が数十人程度と極めて少ないものが目立っているのが実状です。

そのうえ、研究資金の出所が装置の開発メーカーであるケースも少なくありません。
このような背景を勘案して専門家が危惧しているのは、結果に商業的なバイアスがかかっている可能性です。

出ているのが本物の光かどうか患者も医師も分からない状態で比較する「ダブルブラインド(二重盲検)」という厳格な試験を行うと、評価は大きく変わります。
本物の装置を使ったグループと光の出ない偽物の装置を使ったグループでは、最終的な治療期間にほとんど差が出なかったという論文が発表されました。

とりわけ否定派が警戒しているのは、「お金が無駄になるかもしれない」という経済的リスクだけではありません。
人間の身体の仕組みを無視して無理に治療を急ぐことで生じる、副作用などの生物学的なリスクを問題視しているのです。

骨のリモデリングには、生物学的にどうしても短縮できない最低限のタイムラグが存在します。
光加速装置を使ってアライナーを3日周期などに無理やり短縮した場合、シミュレーション上は問題なく進むケースもあるはずです。
しかし実際には、患者の骨や歯の動きが追いつかなくなる「アントラッキング」が高確率で発生してしまいます。
その結果、治療の途中で何度もマウスピースの作り直しを余儀なくされ、かえってトータルの治療期間が延びてしまったという本末転倒なトラブルが起こるリスクは否定できません。
実際に、治療期間を短縮するはずが逆に伸びてしまったというケースが多くのクリニックで報告されています。

加えて、骨の代謝サイクルが追いつかない状態で常に強い力を歯にかけ続けた場合のトラブルも無視できません。
継続的なストレスによって歯根が溶けて短くなる恐れがあるためです。
一度短くなった歯根は元には戻らないため、最悪の場合は治療後に歯がぐらつき始め、抜歯リスクを高める要因となります。

費用対効果は十分か

光加速装置は公的医療保険が適用されない自由診療であり、導入する際は10~20万円前後の追加費用が請求されるのが一般的です。

肯定派と否定派の見解をコストの観点から比較した場合、治療期間に関して肯定派は2年が1年に半減するならば数十万円の価値があると捉えています。
しかし否定派は、科学的な短縮効果は数ヶ月程度に留まる、あるいはそもそも差がないというデータの存在を論拠に、費用に見合わないと判断しているのです。

また、痛みの軽減について肯定派は、毎回の交換時における不快感が減って快適に過ごせる点を大きなメリットに挙げています。
これに対する否定派は、痛みは最初の数日間がピークであり、市販の鎮痛剤や適切な負荷調整で十分にコントロール可能であるため、本装置をあえて推奨する理由にはならないとの見解です。

患者が費やす手間についても、双方の意見は分かれています。
肯定派は毎日自宅で数分くわえるだけなので簡単であると主張していますが、否定派は日々の充電や手入れが必要であり、欠かさず続けられなければ効果はゼロになるとの見方です。

このように否定派のスタンスは、不確実な効果と前述のリスクを天秤にかけた場合、10~20万円という高額な投資をしてまで光加速装置を使用する合理的な理由は薄いと結論づけています。

まとめ

光加速装置はマウスピース矯正を行う際に治療期間を短縮できるといわれているものの、効果のエビデンスが乏しく確実に短縮されるとは言い切れません。
また、強引に歯を動かしていくとアントラッキングが起こりやすくなり、治療途中でマウスピースを何度も再作製することになってかえって治療が長引く心配も生じます。
さらに歯根吸収のリスクも指摘されているため、この装置に頼らずに進めたほうが、結果として安全で確実な治療につながるといえるのです。
東京品川区五反田周辺で矯正治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
一人一人に合った治療方法をご提案させて頂きます。