抜歯後に注意すべき代表的なトラブルの1つとして「ドライソケット」が挙げられます。
放置すると日常生活に支障をきたすほどの激しい痛みへと発展するケースも珍しくありません。
とはいえ、一般の方にはなじみが薄い疾患であるのも事実です。
名前を聞いたこともなければ具体的な症状を知らないという人もまだまだ多いでしょう。
そこで今回は、ドライソケットが起こる原因や具体的な症状、治療の手順、自身でできる予防のコツについて詳しく解説します。
ドライソケットとは
ドライソケットは、歯を抜いた後の穴がうまくふさがらず、あごの骨が見えてしまうことで強い痛みが起きる状態を指します
本来、抜歯の直後にできた穴(抜歯窩)に血液が溜まり、それが血餅というゼリー状の塊に変化して傷口を覆いますが、これが露出した骨や神経の末端を外部の刺激から守り、組織の再生を促すための重要なクッションとして機能します。
順調にいけば血餅を足場に新しい歯肉や骨が形成されますが、必ずしもスムーズに進むとは限りません。
何らかの理由で血餅がしっかり形成されなかったり途中で流れてしまったりすると、穴の底にある「歯槽骨」という顎の骨がむき出しの状態になってしまうのです。
この状態が続くと、骨の表面を通る多くの神経が唾液や空気に触れてしまうため、耐え難いほどの激しい痛みが引き起こされてしまいます。
ドライソケットは一般的に、すべての抜歯において数%の確率で発生するとされていますが、特に下顎の親知らずを抜いた際に起こりやすい傾向があります。
抜歯後は誰でも多少の痛みを感じるため、それが通常の経過による痛みなのか、あるいはドライソケットによるものなのか不安になる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、通常の痛みとドライソケットのサインとでは、明確な違いが存在します。
通常の抜歯であれば、麻酔が切れた直後から24~48時間以内に痛みのピークが訪れるのが一般的です。
以降は処方された痛み止めを飲めばコントロールできるようになり、3~4日目から徐々に痛みが和らいでいきます。
ところがドライソケットの場合は、抜歯直後はそれほど痛まなかったりいったん痛みが落ち着いたりするにもかかわらず、3日~5日目あたりから突如として痛みがぶり返して強くなっていくのです。
ドライソケットの痛みは強烈で、放置すると激しい痛みが2週間から長い場合は1カ月近く続くこともあるため、決して軽視できません。
さらに厄介なのは、痛みが抜歯したピンポイントの場所だけに留まらないケースがある点です。
同じ側の顎全体や耳の奥、こめかみ、頭の横側にまでズーンと響くように広がる放散痛が起こることもよくあり、生活の質を大きく低下させてしまいます。
なお、抜歯窩が正常に埋まっていくかどうかは、鏡で見て確かめることが可能です。
予後が良好であれば、穴の中が赤黒いゼリー状の血餅でしっかりと埋まった後に白い薄皮がかぶさり、徐々にピンク色の歯茎へと変化していきます。
しかし、ドライソケットの場合は穴の中に血餅が見えず、空洞に見えたり底に白い骨のようなものが確認できたりする状態になってしまうのです。
骨が露出するために細菌感染を起こしやすく、抜歯窩から独特の腐敗臭がしたり、口の中にネバネバした膿のような嫌な味が広がったりすることもあるでしょう。
ドライソケットの主な原因
ドライソケットの原因は、場所や骨の性質と物理的な刺激、全身的な要因の3つに大別されます。
その多くが下顎の親知らずの抜歯後に発生するのは、骨と血管の構造に理由が隠されているからにほかなりません。
実は、下顎の骨は上顎の骨に比べて非常に硬く、通っている血管も少なめです。
そのため、抜歯後の出血が不十分になりがちで、血餅が作られにくい状態に陥ってしまいます。
また、物理的な刺激に関しては、親知らずの生え方が引き金となるケースが少なくありません。
例えば、親知らずが横を向いて埋まっている場合は、骨を削ったり歯を分割したりする難度の高い手術が必要になります。
このように体に多大な負担がかかる処置は、周囲の組織へ大きなダメージを与えるため、骨の代謝や治癒力を一時的に低下させてしまうのです。
下顎は唾液が溜まりやすい上に、うがいをしたときに水の動きの刺激を直接受けやすい位置にあるため、血餅が流されてしまうケースがよくあります。
中でもうがいのしすぎはドライソケットを引き起こす代表的な原因ですが、少し注意を払うだけで予防できるものです。
血が止まらない、あるいは口の中をすっきりさせたいからと何度も強くうがいを繰り返すと、固まりかけていた血餅が水の勢いで簡単に洗い流されてしまいます。
また、気になって舌で穴を触ったり、指や爪楊枝、綿棒などで穴の中を突ついたり食べかすを取ろうとしたりするのも、血餅が剥がれる原因になります。
ストローで飲み物を強く吸い込んだりラーメンやうどんを勢いよくすすったりすると口の中に陰圧(吸い込む力)がかかり、穴に留まっていた血餅が外に吸い出されてしまうこともあるでしょう。
そうならないためにも、うがいのしすぎや舌で傷口を触る行為、飲食物を強く吸う行為は控えることが大切です。
抜歯当日の長風呂、激しい運動、飲酒などは一度止まった出血をぶり返させてしまい、安定し始めていた血餅の構造を崩す原因になるため、避けなければなりません。
これらに加えて、全身的な要因には喫煙の習慣も含まれます。
タバコに含まれるニコチンには強い血管収縮作用があり、歯茎の血流を著しく悪化させて血餅の形成を阻害してしまうのです。
ドライソケットの治療法と予防方法

ドライソケットは放っておいても自然に治ることはほとんどありません。
骨の露出に伴う激しい痛みを我慢し続けると、急性顎骨骨髄炎(きゅうせいがっこつこつずいえん)や蜂窩織炎(ほうかしきえん)といった重い感染症に進行し、症状が一層深刻化するリスクがあります。
そのため、ドライソケットが疑われる場合は、すぐに抜歯を行った歯科医院を受診し、しかるべき治療を受けることが大切です。
実際の治療では、まず穴の中に残っている食べかすや古い組織、細菌などを、ぬるま湯や生理食塩水でやさしく洗い流します。
傷口に強い刺激を与えないよう慎重に清潔な状態に整えた後、その穴へ麻酔薬や抗生物質、消炎鎮痛剤が含まれた専用の軟膏や、徐々に体内に吸収される特殊なスポンジ状の保護材を直接詰め込みます。
こうして骨の表面を薬でカバーし、空気や唾液といった外部からの刺激を完全に遮断するため、処置を受けて数時間後から翌日には、強烈な痛みが嘘のように楽になるでしょう。
その後は軟膏の交換や洗浄のために何回か通院することになりますが、痛みをコントロールするための強い鎮痛剤や細菌の繁殖と二次感染を防ぐための抗生物質を服用しながら治療を進めていくことになります。
薬の充填を続けてもどうしても治りが悪い場合、あるいは初期段階で劇的な改善を目指す場合は「再掻破(さいそうは)」という手術を行います。
これはしっかりと局所麻酔をかけた上で、あえて抜歯窩の壁を器具で少し刺激し、わざともう一度出血させることで、血餅を新しく作り直すという治療法です。
麻酔が効いているため処置の間に痛みを感じることはありませんが、術後は再び抜歯直後のような痛みに戻るため、慎重に判断されます。
ドライソケットは一度発症してしまうと、治るまでにどうしても時間がかかるため、まずは発症させないための予防を心がけることが何よりも大切です。
抜歯後1週間ほどは必ず守っていただきたいポイントとして、うがいは決してお口を大きく動かさず、優しくお水を含み洗う程度にしてください。
周囲の歯は通常通り磨く必要がありますが、抜歯窩は触らずにそっとしておき、食べかすが詰まった場合には決して爪楊枝などで取ろうとしてはいけません。
抜歯当日から数日間はおかゆやうどん、ゼリー、豆腐、スープなど噛む必要が少なく傷口を刺激しない柔らかい食事を心がけてください。
また、辛いものや酸っぱいものなどの刺激物、熱すぎるものは傷口の炎症を悪化させるため避ける必要があります。
スープや麺類を食べる際も冷ましてから口元に運ぶようにし、勢いよくすするのは控えてください。
同様に、パック飲料やゼリー飲料をストローで強く吸引するのも避けましょう。
さらに、全身のケアとして禁煙や日常生活の過ごし方にも気を配る必要があります。
タバコに関しては、できれば抜歯前1週間、抜歯後については少なくとも1週間から10日間は完全に禁煙するのが理想です。
どうしても難しい場合でも、血餅が安定する最初の3日間だけは絶対に控えましょう。
加熱式タバコであっても、吸い込む際に口の中に陰圧がかかるため避ける必要があります。
また、抜歯当日のお風呂はシャワー程度にとどめて湯船に浸かるのは避け、飲酒や激しいスポーツなど血流を良くする行為は再出血の原因になるため、安静に過ごすよう心がけましょう。
まとめ
ドライソケットは、抜歯窩と呼ばれる抜歯後の穴を守る血餅が失われ、顎の骨が露出することで起こる非常に痛みの強い偶発症です。
抜歯後3~5日ほど経ってから痛みが強まり、市販の鎮痛剤がまったく効かない場合や、穴の中が空っぽに見える場合はドライソケットの可能性が非常に高くなります。
放っておいても自然に治ることはないため、異変を感じたら速やかに歯科医院を受診するとともに、術前術後の徹底した予防を心がけましょう。
東京品川区五反田周辺で矯正治療をご検討の際には、是非、当院にご相談下さい。
一人一人に合った治療方法をご提案させて頂きます。


